2010年6月17日木曜日

無敵艦隊発進 - 組織のチカラ

いよいよ無敵艦隊がW杯初制覇に向けて発進しました。スイスの堅牢な守備網の隙間を縫って、スペインのショートパスが小気味よく繋がります。そして、ボールの動きとともに、まるでCGをみるような見事な幾何学模様がスペイン選手達によってピッチ上に描かれていきます。バルセロナ生まれのジョアン・ミロのモビールを連想させる非対称ながらも絶妙なバランスと予測を美しく裏切る全体の動き。個々の高い技術と美意識の共通が、この魅惑的なサッカーを可能ならしめています。このスペイン代表の「組織のチカラ」が織りなす美しいサッカーは、誰しも魅了されるものであり、岡田監督が強く憧れるのも無理はありません。
昨日、岡田ジャパンの「団結のチカラ」について書かせて頂きましたが、これは「組織のチカラ」とは全く異なるものです。決して高くはない個々のチカラを最大限に引出し、チームとしてのチカラを高めていくのが「団結のチカラ」。完成された個々のチカラに核融合を起こさせ、チームのチカラを高めていくのが「組織のチカラ」。ジーコが日本の強みは組織力と定義して強化を図り、最後は挫折して、「個のチカラ」と言い出し、肝心の「団結のチカラ」を崩壊させてしまったのが、典型例ですが、岡田監督も同じ誤謬に陥りかけていました。陥っていたという方が正しいかもしれません。それが、いくつかの偶然が重なって、選手達に助けられ、期せずして「団結のチカラ」を獲得することが出来たわけです。日本代表の個々の偏差値を世界レベルにまで引き上げていく為には、まだ相当の時間と同時多発の奇跡を待たなければなりません。それまでは、「団結のチカラ」をしっかり自覚して、研ぎ澄ませながら、日本流サッカーを探っていくしかないでしょう。組織的サッカーとかコレクティブ・サッカーという言葉は暫くは床の間に飾って、眺めているだけにしましょう。
さて、スペインのまさかの敗戦ですが、「これがサッカー」という月並みな言葉で片付けてしまった方がいいでしょう。ただ、めったに起こるものではありません。それが、まだ取り返しのつく、予選リーグ初戦に出たということは、スペインにとって幸いだったと考えるのは楽観に過ぎるでしょうか。スペインにはここから不敗神話を再開し、8番目のW杯優勝国となって欲しいと願っています。それが、今大会が未来のサッカーに残し得る最高の遺産だと信じるからです。
ところで、韓国vsアルゼンチン戦。お互いの持ち味がうまく噛み合った好ゲームでした。途中までは韓国の選手がアルゼンチンの選手以上に楽しそうにサッカーをしていたのが、印象的でした。

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