2010年6月11日金曜日

幸福の女神には前髪しかない

いよいよW杯が開幕しました。NHK中継の現地ゲストは中田英寿氏。語りの途中に入る間投詞には、人柄が表れるものですが、中田の口癖は、「当然、・・・」でした。昔、「要するに」を連発する人がいましたが、話の中身は全然「要するに」になっていませんでした。巨人の長嶋元監督の口癖は「いわゆるひとつの・・・」そして「メイクドラマ」などの和製英語。思いがあふれて言葉が見つからない多感な人柄を表わしていました。中田の「当然」の後には、極めて論理的で明確な言葉が続きました。そして、「やっぱ」や「やっぱし」が幅を利かす中で、律儀に「やはり」という言葉使いをしていたのにも好感が持てました。将来は、サッカー協会の重責を担って欲しい人材です。
「今回は、南アには行かないんですか」という質問をよく頂きます。これまで現地に応援に馳せ参じたのは、現地での応援が最後のひと押しになって、日本代表がきっと勝てる、行かないで負けたら悔いが残るという思いからでした。但し、今回ばかりは、どう応援の声を張り上げようが、どうしようもないという諦観があります。また、現地応援の醍醐味は、何といっても他国のサポーターとの交流にありますが、今回は町をふらついて、他国のサポーターと乾杯したり、応援グッズの交換をしたりすることが、治安の関係で出来そうもないというのも、一因になっています。「どうしたら日本代表は勝てるのか」という質問も頂きますが、「幸運を祈るしかない」というのが答えだと思います。相手が決定機を5回位とPKを1回はずし、なお且つオウンゴールを1つ献上してくれれば、1-0で勝てるかもしれません。昨日、若くして会社経営を行っている女性お二人とお酒を飲む機会がありました。話題は「幸運」について。お一人は、「自分は強運な家系に生まれつき、極めてラッキーな人生を送っている。先日も商店街の福引で1等賞を引き当てた。」と、確かにすべての幸運を引き寄せてしまうような磁力の強い笑顔で仰っていました。もうお一人の女性は、「幸運は、引き寄せ、つかみ取るもの」と断言します。そして、お二人の共通意見は、「幸運は幸運を呼び、偏在する。」というものでした。サッカージャーナリストの大住さんは、「禍福はあざなえる縄の如し」という諺を引用して、「悪運は出尽くした。カメルーン戦では、ありったけの幸運を1試合に集めて、2-1で勝利」という、らしくない、楽観予想をサッカーマガジン誌上で展開しています。不運は幸運で埋め合わされるのか、不運は更なる不運を呼ぶのか、意見が分かれるところです。「幸運の女神には前髪しかない」というイタリアの諺があります。幸運の女神が通り過ぎて、後ろ姿になってからでは遅すぎる、という意味です。日本代表が勝つためには、ゴール近くで、とにかく前を向いて、幸運の女神が横切る瞬間の前髪をつかむしかありません。開幕戦後半44分、気紛れなジャブラニ(W杯公式球)はポストを叩き、地元南アはあとわずかなところで女神の前髪をつかみ損ねました。

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