2010年6月15日火曜日

惑星直列の瞬間 - カメルーン戦

運命の瞬間、ワントップの本田と左ウイングの大久保との位置は逆になっていました。教科書通りのダイアゴナル・ラン (斜めに切れ込む動き)で大久保がDF2人を引き連れてセンターに切れ込み、松井がキックフェイントで間を作った瞬間、本田がステップ・バックでDFの裏側に消え、ピンポイントで松井のクロスが。その直前の遠藤から松井へのパスも含め、全てのピースがピタリとはまった、まさに惑星直列の瞬間でした。本田のゴールは、結果としての必然ではありますが、その過程は奇跡でもありました。奇跡を呼び込んだ本田は本人も言っているように「何かを持っている」のでしょう。本田と大久保の位置取りが逆だったら、きっと、次の瞬間、大久保が頭を抱え、日本列島各地で「オオクボ~」という怒声が湧きあがっていたことでしょう。
カメルーン戦を振り返ると、日本の現時点での世界での位置付けが浮き彫りになります。残り30秒を守り切れなかったドーハの悲劇、勝ちを目前にして6分間で3点の失点を喫してしまったドイツW杯豪州戦の苦い経験を経て、日本は1点を守り切るタフなメンタリティ、戦術を身につけつつあります。サッカー先進国の資格を得つつあるということです。一方で、メンバー全員が守備の意識を共有し、個々のチカラではなく、団結のチカラで相手を封じ込める泥臭いサッカーでしか世界とは戦えないという現実も明らかになりました。おそらく、残り30分間、日本の全選手がランナーズ・ハイにも似た「ゾーン」に入り込んでいたと思います。それが、あの高地での驚異的な持続的ランと集中力の維持を可能にしました。そして、その個々の選手のパフォーマンスを支えていたのが、「団結のチカラ」でした。カメルーン代表チームにはその点が決定的に欠けていました。エトーを右サイドで起用するというル・グエン監督の采配ミスにも助けられました。エトーのシュート数はわずか1本。CFのチュポモティングのシュートが5本。この数字が逆になっていたら、零封は難しかったと思います。
いずれにせよ、日本の最大の武器は「団結のチカラ」。しかし、それは、まだ守備のステージに留まっており、世界レベルで攻撃に応用するまでには至っていないということが、カメルーン戦ではっきりしました。デンマーク紙は、「退屈なサッカー。今大会一の凡戦」と酷評していますが、ゲームをつぶして勝つというのが今の日本のサッカー。ただ、これでは、本田も認めているように「オランダには勝てない」。それにカメルーン戦でのレギュラー陣の消耗は尋常ではないと思います。であれば、オランダ戦は思い切って選手を入替え、俊輔・憲剛の中村コンビを軸に目指してきたパス・サッカーで対抗してみてはどうでしょうか。団結のチカラを手に入れた今の日本代表であれば、大敗はないと思います。阿部が「僕たちはまだ何も成し遂げていない。何も手に入れていない」とインタビューに応えています。デンマーク戦で、再度、惑星直列の奇跡を呼び起こして、グループリーグ突破を果たす為にも、オランダ戦での奇策も必要では?

0 件のコメント: