2010年11月28日日曜日

トイレの神様 - 家族愛と悔恨

植村花菜が紅白歌合戦に出場して「トイレの神様」のフルコーラスを歌うことになりました。9分52秒のとても長い曲です。おばあちゃんに育てられた幼い日々の思い出、そして、反抗期のいさかい、恩返しをする前に旅立ってしまったおばあちゃんへの悔恨の思いが切々と詠われています。
とても、とても切ない詩です。特に感動的なエピソードがある訳ではありません。どこにでもある家族の話です。だからこそ、心に響いて、とても切ないのでしょう。
「♪ どうしてだろう?
人は人を傷つけ 大切なものをなくしてく」
と、育ててくれたおばあちゃんを残して家を出ていった日を思い出して、歌っています。
家族の愛というものは、無条件の愛です。空気のように当り前で、そして、透明です。だからこそ、甘えてしまう。報いることを忘れてしまう。そして、傷つけてしまう。失ってしまった大切なものは、もう戻ってこない・・・。
大晦日に、一人でも多くの人が「トイレの神様」を聴いて、大切な人に「ありがとう」と言えたとしたら、日本の体温がちょっと上がるのではないかと期待しています。

2010年11月27日土曜日

晩秋 - 薔薇、蕾、朝露

以前、薔薇の剪定について書きましたが、秋咲きの薔薇が終わって、再度剪定された枝の先から咲き遅れた花の蕾が出ているのを見つけました。ピンク色の可愛らしい双子です。晩秋の朝の柔らかな陽射しに朝露をきらめかせながら、思いがけない冷気に身を固くしている風情でした。彼女達が花を開かせる頃には、更に温度が下がっているかもしれません。寒気漂う中で、弱々しい太陽を仰ぎ、敷きつめられた銀杏の落ち葉を見降ろしながら、咲き遅れた薔薇の花達は何を想うのでしょうか。初夏の溢れんばかりの陽光を満喫した姉達の幸運を羨み、自らの境遇を恨むのかもしれません。最後を飾る花となることに誇りを感じて、精一杯背筋を伸ばし、凛とした姿で、香り高く、美しい花を咲かせて欲しいものです。応援したいと思います。
(それにしても、日本語は偉大です。朝露、薔薇、蕾。美しい漢字です。「薔薇のつぼみ」も秘密めいていますし、「バラのつぼみ」も可愛らしさを端的に表現しています。美しい日本語を大切に伝えていきたいものです。)

2010年11月25日木曜日

快挙!アジア大会 - 男女ともに金メダル!!

なでしこ、見事な金メダルでした。ここ1~2年で中国、北朝鮮というアジアの壁を突き崩しつつありましたが、今回はその2強を破っての堂々たる優勝。文字通り、アジア最強の地位を確固たるものにした感があります。4試合無失点という安定した守備に支えられての優勝でした。身体能力の高い屈強なDF陣がいる訳ではありません。前線からの執拗なチェース、3人で取り囲んでのボール奪取、サイドに追いこんでの守備、中央のバイタルエリアの的確なカバーリングといった、正に組織での守備が大会を通じて無失点という快挙に繋がりました。言葉にすると簡単ですが、豊富な運動量と高度な戦術理解を要する守備システムです。また、連動性を前提としたシステムだけに、誰か一人でもサボると破綻してしまうというリスクと背中合せです。全員に「献身」が要求されるシステムでもあります。そして、無失点の最大の要因は、最後まで続いた体を張っての守備。文字通りの「献身」。前半ならともかく、体力的に厳しい後半の時間帯にシュートコースに足を伸ばし、あるいは体を投げ出すのは決して簡単なことではありません。なでしこジャパンで体現された、このような「連動」と「献身」の精神を、ザッケローニA代表監督は「チームスピリット」と呼び、日本代表の大きな強みであると評しています。南アW杯で岡田ジャパンが賞賛された強みでもあります。かつての日本代表は「ディシプリン(規律性)に優れているものの、規律に捉われる余り、個の力を十分発揮できない」と言われていました。やろうとしていること、やっていることがさほど変わった訳ではありません。ただ、表現の仕方が「ディシプリン」という受動的な言葉から「チームスピリット」という能動的な言葉に変わっただけで、共有されるイメージが変わり、チームコンセプトが変わったというところもあると思います。言葉は偉大です。
U-21、若き日本代表の戦い方も素晴らしいものでした。7試合1失点の守備の安定もさることながら、計17得点の攻撃力はこれまでの日本代表に無いイマジネーションと決定力に溢れるものでした。そして、劣勢を凌ぎきって勝ちをもぎ取る勝負強さ。ロンドン五輪が楽しみです。(これからアジア予選ですので、まずは予選突破が課題ではありますが・・・。)
雑感その1 : 男女決勝共に地上波での中継は無し(BS/CSでの中継)。手に汗握る素晴らしいゲーム、且つ、金メダルという快挙だっただけに残念です。
雑感その2 :TVでご覧になった方はうなずいて頂けると思いますが、決勝戦の相手UAEの監督はダイエットに成功したロナウドでしたよね。)

2010年11月21日日曜日

回帰と新たな出立 - さよなら夏休み

「さよなら夏休み」という映画が12月3日まで新宿シネマートで上映されています。舞台は1977年の郡上八幡。多感な小学生のひと夏の思い出を描いた作品です。母親に捨てられ、郡上八幡のお寺に預けられた少年の担任教師への淡い恋心、そして、運命の不条理への直面。少年は苦い想いを胸に大人への階段を昇り始めます。小林要監督は、郡上八幡の美しい自然と郡上おどりの伝統文化を要所に散りばめながら、奇を衒うことなく、淡々と少年の夏休みの日々を描いていきます。小林監督は、幼稚園以来の私の幼馴染みです。「故郷」を愛おしみ、日本の原風景を愛し、前作の「アオグラ」(青森グラフティ)でも全編青森弁で60年代の青森とそこでの若者の青春を描いています。
今回、小林監督の中学時代の仲間で、舞台挨拶に駆けつけました。2週間前に高校時代の同窓会、1週間前は、大学時代の仲間と30年振りに再会したばかり。この1ヶ月は、さながらタイムトラベリング月間でした。最近、周りでも同窓会ばやりのようです。人恋しくなる年代なのかもしれませんが、そこには、「回帰」と「新たな出立」という人生の節目があるような気がします。中学から大学にかけての青春時代は、人生の原点でもあります。眼前に広がる果てしない人生の重圧に押し潰されそうになりながら、一緒に走り始めたあの頃。その原点から、社会へのゲートをくぐって、いつしかそれぞれの道に走り去っていった仲間達が、それぞれのロードレースを走り終えて、マラソンゲートから周回コースに戻ってきたというところでしょうか。まだレースは残っていますし、ラストスパートの苦しい局面もこれからです。ただ、みんなの足取りは昔のがむしゃらなペースと異なり、随分ゆったりとしながらも安定感のある力強いものに変わってきています。
「回帰」と「再スタート」は、小林監督の重要なテーマです(間違っていたらごめんなさい)。映画のラストシーンで、主人公たちは、支えてくれる仲間達とともに「やり直す」ことを誓います。今、仲間達と「原点」を確認しあって、もう一度並走を始めていくことに、幸せと心強さを感じています。

2010年11月10日水曜日

アジア大会 - 中国戦、快勝

尖閣諸島問題で日中関係が不安定な中、大きな混乱なく、広州での中国戦が終了したのは何よりでした。武装警官による厳戒態勢が功を奏したのかもしれませんが、対日感情の鎮静化が進んでいると期待したいものです。写真の右側に写っている山羊の大会マスコットのゆるキャラらしいのんびりとした平和の祭典になってくれることを祈りたいと思います。
さて、ゲーム内容ですが、BS1での深夜の録画放映という扱いが残念でならないくらいの快勝でした。中国も、スピード豊かなカウンター攻撃を仕掛けて決定機を再三作るなど、実力の差は点差ほどなかったと思います。勝負の分れ目は、技術とイマジネーションのわずかな差。山崎の先制点の抑えたハーフボレーも見事でしたが、永井のループでDFの頭を超えたワンタッチ・パスのアシストはイマジネーション溢れる芸術的なものでした。2点目の永井のゴールは、ヘディングシュートがうまくヒットしなかったのを、前のめりになりながら、そのまま左足を振り抜いたもので、日本人離れした反応とボディバランスでした。また、ディフェンスも、紙一重で凌ぎきる勝負強さはこれまでの日本代表になかったものでした。体の入れ方、ボールを受けて前を向く技術が格段に向上しているのには驚かされました。W杯で得た教訓、課題への対処が、この短期間でA代表のみならず、ひとつ下の世代にも共有されていることにただただ驚嘆しました。今回の代表チームは、召集されていない香川、宇佐美、原口、金崎などを含めて「プラチナ世代」と呼ばれています。小野、稲本、高原の黄金世代を超える世代として期待されていますが、U17世界大会でのグループリーグ敗退、U20世界大会アジア予選突破ならずと、これまでは必ずしも期待に応えるに至っていませんでした。今回のアジア大会で実績を積み、自信を持ってロンドン五輪に臨んで欲しいと思います。

2010年11月9日火曜日

鉄人28号 - No Buddy, No Life!

写真は、神戸市新長田駅そば若松公園にそびえる鉄人28号のモニュメントです。高さ15.6m。直立すると18mとなり、実物大(?)となります。高校時代のクラス会のついでに立ち寄ってみました。高校時代3年間を一緒に過ごした41人の仲間達とは、数年前から定期的に会うようになり、全体でのクラス会を、清水、熱海に続き、今年は関西在住組が幹事となって神戸で開催しました。静岡県各地からお山の大将が集まり、競い合っていたこともあり、「なかなか馴染めなかった」「劣等感に苛まれていた」などの独白もありましたが、今にして思うと、「車輪の下」の日々で、得難い仲間達、人生のBuddyを作ることが出来たというのが、共通した意見でした。高校卒業後別々の道を歩み、それぞれの世界で大きく成長した姿に接するにつけ、静岡の片田舎の高校で偶然に素晴らしい仲間に巡り合えた幸運に感謝せずにはいられません。個々人の本質部分は高校時代から全く変わっていないだけに、その周りを覆う年輪なり、オーラなりが余計鮮明に感じられます。何ら飾る必要もなく、無防備なまま酒を酌み交わしていると、脱力しながらも不思議に力がみなぎり、澄んだ気持ちの中で物事の本質が見えてくるような気になります。飾らないからこそ、自らの人生のエッセンスを淡々と伝えることが出来、無防備だからこそ、いつの間にかそれを吸収出来る。ただ接しているだけで磨かれ、高みに導いてくれるのが、仲間。そして、時にはただ黙々と壁打ちの壁になってくれる。仲間と出会い、仲間との時間を少しずつ重ねていくことは、人生のとても大切な要素だと思います。
鉄人28号は、もともとフランケンシュタインと爆撃機B29をモデルとして生み出された悪の権化のようなロボットでしたが、読者から圧倒的な支持を得た為、正義の味方として生まれ変わらせたという逸話があります。ロボットでありながら、リモコン操縦する金田正太郎少年との関係は、決して、操縦者・兵器の関係や主人・下僕の関係ではなく、一緒に戦う仲間の感がありました。子供の頃、半ズボンでスポーツカーを乗り回し、鉄人を操作する金田少年に憧れながら、鉄人28号の姿に寡黙な頼れる友人を重ね合わせていたような記憶があります。若松公園のモニュメントは、地元出身の原作者横山光輝にちなんで、長田区の商店主たちが寄付を募って、阪神大震災後の復興のシンボルとして建立したものです。仲間が気持ちを合わせれば、これだけのものを作ることが出来るというシンボルでもあります。色々な仲間達と何かを残すことが出来たらと、ふと考えるこの頃です。No Buddy, No Life!

2010年11月7日日曜日

Project SM@SH - 空と君のあいだに

「空と君のあいだに」はTVドラマ「家なき子」の主題歌として大ヒットした中島みゆきの代表作です。曲の題名は「空と君のあいだに」なのに、サビでは「空と君とのあいだには今日も冷たい雨が降る」と「君」の後に「と」が入ります。気になります。単なる見落としか意図的なものか?中島みゆきは本当にミステリアスなシンガーソングライターです。
少し前にProject SM@SHと称して、秘湯巡りメンバーで、その中の長老SMさんの中伊豆の別荘(Second House)にお伺いしました。別荘でのSMさんのロハスライフを拝見し、併せてテニスを楽しむということで、Project名はSM@SH。我ながらお洒落なネーミングです。そのProject で出会った「空と君のあいだに」の風景2題。
上の写真は、空と君のあいだに「海」があります。伊東の南のはずれにある赤沢温泉無料露天風呂は、すぐ下まで太平洋の波が打ち寄せています。目をこらして頂くと、写真の右上に船が浮かんでいます。脱衣所も無い混浴で、ついつい裸で入ってしまうのですが、地元の人も海遊びの後などに入るので、出来るだけ水着着用で入って欲しいとのことでした。
下の写真の空と君のあいだには「清流のせせらぎ」があります。川端康成が伊豆の踊子を執筆したことで有名な天城湯ヶ島温泉旅館湯本館の露天風呂です。文字通り野趣あふれ、日本人に生まれたことを感謝せずにはいられない贅沢な露天風呂です。天を仰ぎながら入れるから露天風呂なのですが、その「空」を思いっきり満喫できる2つの温泉でした。
中伊豆での別荘ライフ、露天風呂巡り、伊豆稲取「徳造丸」の金目鯛の煮付け、三島「うなよし」の鰻丼、そして、雨の合間を縫ってのテニス。濃厚な48時間でした。いつも通り、Mission Complete!!

2010年11月3日水曜日

歓喜 - ナビスコ杯決勝

Jubiloはポルトガル語で「歓喜」を意味します。ジュビロ磐田の名前には、サポーターをはじめ、全ての人々に感動と喜びを与えるという意味が込められています。10年前のジュビロ全盛時代には毎試合歓喜を与えてくれました。しかしながら、世代交代に失敗して長い低迷期に入り、一昨年にはJ2との入替え戦の末辛うじてJ1 に留まるという苦い経験も積みました。2003年度の天皇杯優勝以来、タイトルから遠ざかっています。一方のサンフレッチェ広島は優勝すれば初タイトル。国立でのナビスコ杯決勝は、両チームの緊張感がピッチ全体を覆いつくしているような重たい立上りでした。両チーム通じての初シュートが前半15分上田のFKという、双方とも慎重に守備を固め、ラストパスを通させないという展開。前半36分の船谷のヘディングシュートによるジュビロ先制からゲームは一挙に加熱し、ボールキープ率では圧倒的にジュビロながら、カウンターからの少ないチャンスを確実にものにした広島が、後半3分に2-1と逆転。押しに押しながらゴールの遠いジュビロ。流れは完全に広島。勝負のあやは、両監督の采配でした。後半15分、先制点をあげた船谷に替えて菅沼投入。ジュビロ柳下監督が動き、この采配がズバリ当たりました。その菅沼に左サイドを切り裂かれ続けた広島は、残り10分、たまらずミキッチを下げて守備固めに入ります。佐藤寿人を負傷で欠き、李は同点ゴールシーン以外はほぼ封じ込められ、唯一機能していたミキッチを下げてしまった広島ぺトロヴィッチ監督は自ら3本の矢を折ってしまった感があります。一方、柳下監督は、ジウシーニョに見切りをつけて山崎を投入し、更に勝負に出ます。流れはジュビロに傾き、終了間際の前田の同点弾は必然ともいうべき展開となりました。延長戦に入っての菅沼、山崎の立続けのゴールという交替采配がズバリ当たっての柳下監督快心の勝利でした。主催者発表のMVPは前田(2ゴール2アシストと数字上は文句無し)でしたが、真のMVPは120分間ピッチを走り回り、攻守の要そして起点となり続けた西だと思います。そして、影のMVPは柳下監督。と、勝手な評論は出来ますが、リーグ戦から中3日のジュビロに対して、広島は中2日というハンディを負っており、延長戦に入ったら不利は明らか。ぺトロヴィッチ監督として守りに入らざるをえなかったのは已むを得ない選択でした。また、1点ビハインドの状況で、点を取りに行った柳下采配も当然といえば当然。しかしながら、一方は名采配と称えられ、一方は敗戦の責任を一身に負うという、指揮官とは厳しい職務です。
今回は、新潟から駆けつけた反町姫と久々に再会し、神保町の中華料理店で祝杯をあげました。「歓喜に包まれて」といいたいところですが、あまりにも長い間歓喜から離れていたせいか、どうも喜び方がしっくりきません。常勝ジュビロ復活に向けての第1歩を踏み出した記念すべき日に、とりあえずは乾杯。(写真は国立ジュビロサポーター席の歓喜の瞬間)
P.S. ブログを開始して2年余。アクセス数が5,000を超えました。つたない独り言をお読み頂いている皆さんに感謝し、このネットを通じての見えない絆を大事にしていきたいと思っております。