2008年10月31日金曜日

イビチャ・オシム

大阪に出張することになり、駅のキオスクで久々にNumberを買いました。何故か表紙のオシムに惹かれたからです。オシムのロングインタビューに始まって、トルシエ、ジーコ、ヒディンク、マチャラの日本サッカー論は、秀逸でした。日本代表サポーターにとって、これほど価値のある¥530は無いと思います。お勧めです。
もともと、オシムにはうさんくさい皮肉屋の監督というイメージがあり、あまり好きな監督ではありませんでした。ジェフ千葉の走るサッカーは泥臭く、美しいものではありませんでしたし、オシム語録は単にマスコミを煙にまく為だけの思いつきのコメントだと思っていました。しかし、ロングインタビューは高い知性と洞察力に裏打ちされた極めて高度な日本文化論でした。更には、言葉の端々に人生哲学が散りばめられており、完全に打ちのめされました。「日本は、サッカーに限らず政治でも経済でも、あらゆる分野において、アジアで最高の国であり、日本人であることに誇りをもつべきである。日本はあらゆる面でアドバンテージを持っている。W杯予選が総力戦であることを考えると、これは大きな力になる。」水泳や陸上競技を論じる時に「国民性」などとはいいませんし、バスケットボールの国際試合でも「国の総力戦」などという言葉は用いられません。 でも、サッカーは特別なのです。代表チームには明らかに国民性が現れますし、代表戦は国対国の総力戦なのです。オシムは、若手の育成についても苦言を呈しています。「今は内田や安田をもてはやしているようだが、もっと慎重になるべきだ。水野晃樹も同じ。彼らにはピッチ外も含め、まだまだ学ぶべきことがある。」また、カフェでケーキをなかなか選べないインタビュアーに対して「たった5種類しかないのに、なぜそんなに時間がかかるのか。だから日本人は判断ができないと言われるんだ」と、オシム語録は健在です。オシムには、かつての代表監督だったフランス人にはなかった日本に対するリスペクトがあり、ブラジル人にはなかった哲学がありました。それは、彼のユーゴスラビアでの苦難に満ちた半生の中で培われたものなのでしょう。彼のアクシデントの為に日本代表が失ってしまったものが如何に大きいものだったかを改めて思い知らされました。豪州監督としてドイツW杯で日本を下したヒディンクは「日本がもっといいプレーをする力を持っていたことは明白なのに、ラスト8分で豪州に3点を入れられ逆転負けを喫してしまったこと」を指摘し、日本代表の効率と責任感の欠如を問題視しています。マチャラは、「カズやヒデが去り、カリスマを失った日本は明らかに弱体化が進んでいる」と警告を発しています。トルシエは、「日本代表は精神的に安定しているときは本当に強いが、ひとたびメカニズムに問題が生じると、ゲーム運びがアマチュアに戻ってしまう」と分析し、「困難に直面したときに必要とされるのが戦術的規律であり、日本人監督は経験不足ゆえにこの戦術的規律を選手に教えられない」と相変わらずの上から目線で高慢に指摘しています。掲載された各監督のインタビュー内容はジーコを除き理路整然としており、極めて質の高いサッカー論となっていました。このコミュニケーション能力は、残念ながら日本人監督に欠けている部分であり、代表選手たちにも決定的に欠けている部分です。トルシエやヒディンクが指摘している「メカ二ズムに問題が生じたとき」にチームに落着きと冷静さを取り戻させるのは選手間のコミュニケーションです。残念ながら日本人はこのピンチに際してのコミュニケーション能力に決定的に問題をかかえています。以心伝心の国ゆえに、そもそもコミュニケーションが苦手な国民性に加え、苦しいときは弱音をはかず、黙々と頑張るのが美徳とされているからです。このコミュニケーション能力は容易に高められるものではなく、問題意識をもって長期的に取り組んでいかなければならない重要な課題です。若者のコミュニケーション能力が明らかに低下傾向にある現状だけに、益々その重要性は増しつつあります。このような広い視野と多角的な視点をもった人物こそが日本代表監督としてふさわしい訳であり、その為には海外で外国チームを率いることを通じての異文化体験とコミュニケーション能力の向上が必須ではないかと思います。その意味で、残念ながらトルシエの高慢な指摘は否定できません。岡ちゃんや山本さんや反町さんに中東あたりで監督の経験を積んでもらってから、日本代表監督に戻ってきてもらうか、海外での経験を積んだヒデか我等が名波が将来の日本代表監督候補になるのを待たなければならないのかもしれません。それまでは、外国人監督やむなし。次はピクシーもいいけど、大分のシャムスカがいいかもしれませんね。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

まさに私も先週末大阪出張で久々ナンバー購入で共鳴したしだいであります。。
トゥルシエや他そうそうたるメンバーは”日本人の勤勉さなど長所を誇るべきで、90分間プレスをかけ続けるJリーグが特徴的”とコメントしていましたが、それには違和感を覚えました。Jよりプレミア、フランス、イタリアの方が明らかにプレスの継続、激しさは比にならないと僕は思います。
そして何より日本人に足らないのはあの激しいあたりでだったり、K.Yが悪者にされしまう横並び的な、出る杭は叩かれる的な社会システムが横パスやシュートレスを誘発するのは否めません。
イングランド人のフリーライターの記事に高原の復活こそが日本代表の上昇の鍵であるとコメントがあり、やはりドイツ時代までの高原は相当なインパクト、実力が発揮できていたのだと思います。そして今REDSのチーム状態で忙殺されますが、既に復活しつつあることを最後に付け加えさせて頂きます。

名波ジャパン10 さんのコメント...

Haseさん、投稿有難うございます。
ナビスコ杯は大分の優勝で幕を閉じましたが、Jリーグでのアンチ大分は相当なものらしいです。あんな面白くないサッカーをするチームに勝たせるなということで、各チーム監督はやっきになっているようです。その「盾」を突き破れる「矛」が出てきてこそJリーグ全体のレベルがあがる訳であり、色々なサッカーがあっていいと思います。ちょうど高校サッカーで「走るサッカー」全盛の中で、「セクシーフットボール、野洲高校」が出てきたように。ただ、シャムスカの弱いチームを率いる監督術は相当なものです。W杯本大会では弱小チームの日本を任せてみてもいいのかなと思います。