2011年7月20日水曜日

なでしこ快挙の秘密 - サッカー愛

なでしこが世界の頂点に立ちました。なでしこ快挙の秘密はどこにあるのでしょうか。まず挙げなければならないのは、その技術の高さでしょう。スピード、強さ、高さといったフィジカルでは世界と差があるものの、トラップ、パス、ドリブルなどの基本技術、そして、なによりもシュートのバラエティ、正確さは群を抜いていました。決勝での芸術的な2ゴールはもとより、日本の今大会の12ゴールはいずれも技術的に高度で文字通りワールドクラスのシュートばかりでした。この技術の高さは、子供の頃は女子のサッカーチームがなく、男子と一緒に練習・ゲームをせざるを得ないという環境の中で磨かれ、培われたものです。GK海掘のセービング技術の高さも見事でした。これまでなでしこのGKはウィークポイントでした。層の薄い日本の女子サッカーでは、人気の低いGKには多くの人材が集まらなかったからです。海堀の活躍に刺激された女の子達がGKを目指すようになるとしたら素晴らしい遺産のひとつとなります。
2つ目は精神力。ゴール前での冷静さ、PK戦前にも笑顔を見せるタフさ、格上の米国に2度もリードされながら、追いついた気持ちの強さ。そして、120分間走り続けるのもスタミナ以上に強い精神力があってこそです。この精神力は体力と異なり、練習のみで鍛えられるものではありません。日常生活を含めた人格形成の中で結晶化していくものなのです。プロサッカー選手はサッカー少年にとって憧れの職業であり、日本代表クラスともなれば、それなりの収入を得、サッカー以外にも多くのものを手に入れることが出来ます。一方で、なでしこ達は、エースの澤でさえ、所属クラブからの年俸は360万円といわれています。他の選手達は月10万円の報酬と言われ、殆どがアルバイトをして生計をたてているのが実態です。経済的にも環境的にも恵まれない中で、彼女たちは、それでも、サッカーを選択し、多くのものを諦めながら、サッカーに打ち込んでいるのです。それだけ、サッカーを愛しているからこそ、大舞台でも臆することなく自分たちのサッカーを楽しみ、最後まで走り抜き、PK戦の前でも笑顔でいられたのです。なでしこ21人を固い絆で結び付け、あの団結力を作り出していたのは、佐々木監督の統率力、澤選手のリーダーシップの前に、サッカー愛という強烈な磁力だったのだと思います。澤選手は、北京五輪の際「苦しくなったら私の背中を見て」と言って、チームメイトを鼓舞しました。今回はその必要はなかったと思います。なでしこ達は、それぞれのサッカー愛をのびのびと表現する術を身につけていました。自ら優勝というゴールを定め、しっかりとそれを見据えて、疾走していました。サッカーの神様もその愛に応えてくれました。(写真は、日の丸を羽織って駆ける澤選手)

0 件のコメント: