2011年6月7日火曜日

チェコ戦 - トルシエの残像

歴代の日本代表監督で私の最も苦手な人物はフィリップ・トルシエです。大本命ベンゲルにふられた後、なし崩し的に同じフランス人に決まった不透明な選考過程もさることながら、傲岸不遜な態度には受け入れ難いものがありました。しかし、その一方で、その業績が歴代監督の中でNo.1であることも認めざるを得ません。アジア杯優勝、シドニー五輪ベスト8、日韓W杯グループリーグ突破。何よりもナイジェリア世界ユース準優勝は日本サッカー界の金字塔でもあります。トルシエの代名詞といえば、フラットスリー。当時はこの奇抜なシステムをトルシエマジックとして期待を抱いて見守っていましたが、今にして思うと、とても世界には通用するはずの無い無謀な守備陣形だったと思います。ザッケローニは人格的にはトルシエの対極に位置する人物です。エキセントリックなトルシエに比べて落ち着いた佇まい。全てが「俺が、俺が」のトルシエに対して、常に「チーム」が主語となるザック。(トルシエは、アジア杯でFKからのサインプレーによる名波の芸術的なボレーシュートが決まった瞬間、ベンチに向かって「見たか、オレのゴールだ」と吠えたそうです。)ザックの代名詞3-4-3も危険をはらんだシステムであり、不安が無い訳ではありません。5バックになってしまい、押し込まれっ放しになってしまう危険性。眼前の事象への対処よりも原理原則を優先してしまいがちな日本人の生真面目さ故の危うさ。勿論、自信という最強の武器を手に入れた本田、香川、長友らの若きサムライブルーが、3-4-3に囚われること無く、それを自由に操れれば、間違い無くトルシエの記録を塗りかえ、私もトルシエの残像から逃れることが出来るのですが・・・。
さて、チェコ戦ですが、まずまずだったのではないでしょうか。若き日本代表は予想以上に大人でした。新しいシステムを自分達なりに消化していました。開始直後は、3-4-3の攻撃的布陣(写真)で押し込み、その波が途切れかけるとみるや、気遣いのウッチーが引き気味にポジションを下げ、4-4-2のフォーメーションへ。前半終了間際に、3-4-3に戻して、再度猛攻。こんなサッカーが出来るようになったのかと思うような大人の戦い方でした。ただ、ハーフタイムにかなり活を入れられたのか、後半は、内田もポジションを下げずに、3-4-3のままの布陣での攻防。チェコのスピードの無さに助けられて、失点こそなかったものの、守備には課題を残しました。しかし、攻撃面では、中盤でのノッキング気味のパス回しで、攻撃の厚みを十分に活かすことが出来ませんでしたが、目指す方向性は見えていました。終始引き気味のチェコとの対戦は、W杯アジア予選のアジア勢との戦いのいいシミュレーションになったと思います。3-4-3のシステムは、アジアでの戦いにおいてこそ有効だと思います。

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