2011年5月19日木曜日

Andrew Wyeth - 大地の骨格

出張でフィラデルフィアに来ています。フィラデルフィアの郊外にBrandywine River Museumという小さな美術館があります。地域の環境史跡保全団体により設立・運営されており、古い製粉所の建物が改装されて(史跡保全の一環)利用されています。また、運営も地域のボランティアによりなされています。この美術館では、20世紀を代表する米国画家Andrew Wyethの絵を鑑賞することが出来ます。近隣に住んでいたWyeth夫妻の好意で、同夫妻が所蔵しているWyethの絵が季節ごとに貸し出され、様々な作品を楽しむことが出来るという世界でも稀な美術館です。
今回は時間が取れなかったので、到着当日にレンタカーで空港から直行しました。閉館間近でしたが、日本から来たのでと無理を言って、入れてもらいました。写真の絵は「Snow Hill」という題名の作品です。Andrew Wyethの展示館の入り口に掛けられており、私の好きな作品のひとつです。子供達が雪の上で踊っているのを写実的に描いた作品のように見えますが、ヘルガやクールナー夫妻などWyethの作品のモデルとなった人物が描かれた実は幻想的な作品です。Wyethは、モデルの日常の一瞬の表情を捉える為に、自らが透明になって描けたらと語っていますが、この作品では、Wieth自身が左奥に透明になってダンスの輪に加わっていると言われています。
WyethをFacebookで紹介させて頂いたら、「寂しげな絵が多いとの印象がある」とのコメントを頂きましたが、彼が好んで秋と冬の風景を描いていることが一因かもしれません。彼は「私は秋と冬が好きだ。大地の骨格とその孤独が判る。その下で何かが待っているのを感じる」と語っています。彼の春の絵「May Day」にすら冬の名残りの残雪が描かれています。雪の手前に白い可憐な雑草の花を描きながら「私は腹ばいになって花を観察するのが好きだ。春の息吹が感じられる。私はその一部になりたい」と述べています。自然と常に向き合って、自然への同化を図りながら、描き続けたからこそ、精緻で写実的ながら、高い精神性を感じさせる作品を生み出したのだと思います。

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