2010年7月12日月曜日

Viva!! España!!

「強い者が勝つわけではない。勝った者が強いのだ」と語ったのは74年W杯ドイツ大会を制したベッケンバウアー。そして、敗者となったクライフは「美しく負けることを恥と思わず、無様に勝つことを恥と思え」という言葉を残しました。しかし、クライフの末裔ながら、どちらかというと、ドイツやイングランドのテイストを漂わせるオランダ代表は、美しさよりも勝つサッカーに徹していました。そして、最後まで美しさにこだわったスペインに、勝利の女神は微笑みました。
オランダは、中盤を省略し、ロングパスでシンプルにDFの裏をつく攻撃に徹する一方で、相手の中盤を激しく潰しにいくという、クライフの理想とは対極の戦法で、勝利を目指しました。むしろ、FCバルセロナのサッカーを通じてクライフ色に染められたスペイン代表の方が、クライフの掲げた美しく勝つサッカーの理想を具現化していました。オランダの挑発に乗ることなく、自らのショートパスのリズムを最後まで崩さずに貫く姿勢には拍手を送らずにはいられません。7戦目、そして、中3日という連戦の疲労は覆うべくもなく、ビジャの体のキレは明らかに鈍っていましたし、イニエスタ、シャビらにも一瞬の判断の遅れが散見されました。それでも、最後のイニエスタの決勝ゴールに繋がった流れるようなパスワークは、サッカーファンを魅了する美の極致でした。途中でオランダDFのクリアミスがはさまれるのですが、それさえも一連のパスワークの美しさにアクセントを加えているように見えました。
美しいサッカーが勝利をおさめたことは、これから4年間のサッカーの方向性への影響を考えると喜ばしい限りです。とはいえ、その華麗な攻撃的パスサッカーが、しっかりとした守備に支えられていたという事実を見逃してはいけません。決勝戦でのスペインの勝利は、プジョルの献身的な守備とカシージャスのスーパーセーブの連発なくしてはあり得ませんでしたし、決勝トーナメントに入ってからの4試合は、すべて1-0の勝利であったという事実が、スペインの勝利が堅守によって得られたことを如実に物語っています。スコアだけみると、まるでイタリア代表が理想とする試合結果のようですが、「守って、守って、攻める」のか、「攻めて、攻めて、守る」のかというサッカー哲学の点で大きく異なります。2010年W杯でのスペイン代表の優勝は、世界のサッカースタイルの分水嶺として後世記録されることを願ってやみません。
スペインの攻撃的サッカーが、固い守備に支えられていたとしたら、今の日本代表は、その基盤にあたる守備の部分につき、団結力という日本の強みで何とか世界レベルに手が届きつつあるという段階です。美しいサッカーを目指すためには、あと2つ程、山を越えなければならないでしょう。日本代表には、このW杯で得た日本らしい守備というものへのヒントと自信を確実に自らのものにし、坂の上の雲を望みつつ、まだまだ険しい世界への山道を登っていって欲しいと思います。
ともあれ、夢のような1ヶ月が、夢が現実となって、幕を閉じました。「Viva!! España!!」「Viva!! Copa Mundial!!」

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