2010年7月14日水曜日

ジャブラニの向こう側

虹の国でのW杯の後遺症でしょうか。時々、ブブゼラの音が頭の奥で鳴り続けているような感覚に襲われます。W杯の余韻が残り続けているうちに、今回のW杯の総括をしておきたいと思います。
スペイン対オランダという攻撃的なチームの決勝となったにも拘わらず、全体的には極めて守備的な大会でした。ゴール数は64試合制となった1998年フランス大会(171ゴール)以来最低の145ゴールに留まりました。ファウル数も4年前のドイツ大会の346から261へと大幅に減少し、FKの減少が、キッカーにとって扱いにくいジャブラニと相俟って、セットプレーからの得点の減少を招いたともいえます。ただ、南米のチームをはじめとして、極めて高いレベルの組織化された守備でゴールを与えない戦いが目立ち、W杯を勝ち抜くために守備力を高めるチーム作りが定着してきた感がありました。 キーワードとしては、攻撃的サッカーの復活、ファウルの減少、組織的守備というものが挙げられると思います。サッカーは、正しい方向に、「正しい」という言葉が不適切ならば、好ましい方向に向かっているといえるのではないでしょうか。
組織力が地域に拘わらず均一的に高まってきた中で(アフリカ代表のガーナ、南米代表のウルグアイは極めて高い組織力を有していました)、その組織力に個人の力では対抗できなくなったというのも顕著な傾向でした。イングランド・ポルトガル・アルゼンチンなど頭抜けたスーパースターを擁するチームが、組織力の壁を突破出来ずに敗退していきました。イタリア、フランスという前大会決勝進出国が組織そのものを確立できなかった為にグループステージすら突破出来ずに大会を後にしたのは象徴的でした。高度に戦略的になった現代サッカーでは、選手個々の力量の総和よりも、組織としての強さが、勝敗を決するようになりました。傑出したサッカー選手の出にくい土壌の日本にとっては、好ましい傾向といえます。とはいえ、組織的に守備をし、組織的に攻撃を組み立てても、最後のゴールを決めるのは個人であるという事実に変わりはありません。スペインの総得点8点のうち5ゴールを決めたビジャの例をひくまでもなく、決定力を有したストライカーの存在は、チーム作りの重要な部分を占めています。如何にストライカーを育てていくのか、あるいは、あくまでMFからのゴールを狙っていくという日本独特の路線を歩んでいくのかは、日本サッカーの直面する課題であるといえます。

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