2010年7月19日月曜日

日本サッカーの明日

W杯南ア大会が幕を閉じてから早や1週間。頭の片隅で鳴り続けているブブゼラの音量もここ数日は一段とトーンダウンしているような気がします。未だに鳴り続けてはいますが・・・。ブブゼラの音が消えてしまわないうちに、日本代表の戦いについて、総括しておくことにします。
岡田監督の評価は難しいところです。ベスト16を達成し、記録的にはW杯での最高成績を残したことで、岡田監督は歴代最高の監督として日本サッカー史に名前を留めることになります。ベスト8への進出はならなかったものの、決勝トーナメント1回戦で記録上は引分けという結果を残したことにより、トルシエ監督の日韓W杯での記録を上書きしてくれたという事実は、「個人的には」高く評価しております。しかしながら、本戦でのいきなりの戦術転換、メンバー変更は、結果オーライで批判を免れるものではありません。無策のまま代表を南アに送り出した協会幹部も含め、しっかりと振返り、反省を怠ってはならないと思います。本戦での采配は十分高い評価ながらも、監督就任後からのトータルな総合点では、必ずしも合格点を与えることが出来ないというのが、私的評価です。
今回の大方の予想を覆す好成績の要因は、何といってもチームの団結力でした。マスコミやサッカーファンからのバッシングがむしろチームの結束力を高めました。本大会直前での戦術転換という監督のヤケッパチ采配に、選手たちは不意に大海原に投げ出された感があったのではないでしょうか。結束感は否応なく高まらざるを得ませんでした。そして、2006年W杯ドイツ大会での苦い教訓が活かされたことは、中澤はじめ多くの選手が認めているところです。カメルーン戦の勝利が分水嶺となりました。戦術転換、メンバー変更で大きな不安を抱えながら臨んだこの一戦で、もし、負けていたら、チームは空中分解し、ドイツの二の舞となっていたことでしょう。全員の連携で得点し、全員で守り切ったカメルーンでの勝利は、1勝以上の自信を選手達に与え、団結のチカラが日本の生命線であることを自覚させました。団結のチカラで守備を安定させ、デンマーク戦では攻撃面にまで踏み出した感がありましたが、パラグアイ戦では、残念ながら、攻撃での自信を得るまでには至っていなかったことを露呈しました。ブロックを固めての守備では、責任感・使命感・献身といった日本人のメンタリティの特長が発揮され、4試合で2失点という見事な成果に繋がりました。しかし、そのような組織的守備は、スペイン、オランダ、ドイツといった今大会の上位チームでは当然のベースとなっており、ブラジルすら、基本的戦略として取り入れていました。要は、世界レベルにようやく手が届いたということでしょう。また、阿部というリベロ(正確にはドイスボランチの底)を組み入れて、ようやく機能した守備システムであるという事実も認識しておく必要があります。守備に枚数を割いた結果として、当然、攻めの枚数は減ることになります。ちょうど、1人退場者が出た戦いを想像すると判り易いと思います。守備の枚数を増やすことで、守備面では何とか世界と互角にわたりあえたものの、攻撃面では、課題を残したというのが、正当な評価だと思います。このまま岡田式ドイスボランチで守備の安定を高め、運動量とカウンターで攻撃を組み立てていくシステムを志向していくのか、守備の枚数を戻しながらも、個々の献身的動きで補いながら、守備力を世界レベルに引き上げていくのか、日本らしいサッカーとは何かを考えつつ、決していかなければならないテーマだといえます。
選手達が「このチームでもっと戦いたかった」と口を揃えて語っていたところに、このチームの強さの源泉が窺えたとともに、日本らしいサッカーとは何かのヒントを垣間見た感がありました。チームとしての視点を優先することが、日本人のある種の限界となっていることは確かですが、やはり、そこにこそ日本固有の美意識があり、強さがあるのです。まずは、チームとしての団結のチカラを確立し、それを個のチカラで引き上げていくということが、日本代表の基本的なチームマネジメントであることを認識したのが、今大会最大の収穫だったと思います。
この教訓を次に繋げていくべき代表監督の人選は8月中に完了するということです。また、日本サッカーのベースとなるJリーグは既に再開しました。「南アでの躍進が日本サッカーの新たなステージへの扉を開いた」と語られる日を心待ちにしたいと思います。

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