2011年2月16日水曜日

Project青秋Fantasy - 第1章

「大曲からの在来線は運休」との車内アナウンスを聞き、私たちは横手行きを諦めて秋田に直行することとしました。秋田で乗継ぎまでの3時間をどう過ごすのか、早速、ネット検索で情報収集。キーワードは、横手やきそばときりたんぽ鍋。元来、「満腹ツアー」への参加がきっかけとなって始まった私たちの秘湯巡りの旅ですので、「名所観光<郷土料理」の定理が優先されます。数ある候補先からN隊長がその動物的嗅覚で選りすぐったのが「どん扇屋」。駅ビルの中にあり、1軒で秋田名物料理を全て味わうことが出来ます。先ずは、横手やきそばでテーマをひとつクリアし、ついでにこのお店のお薦め、ホルモンやきそばと食比べ。ウスターソース味の素朴な味わいはさすがにB級グルメB-1グランプリ優勝の力強さを感じましたが、奥深さでは富士宮やきそばに軍配を上げたいと思います。稲庭うどんは抜群の安定感。きりたんぽ鍋はこれぞ秋田。B級グルメ王シェフパTが喰いついたのは「ハタハタ寿司」。切り身のハタハタをご飯に混ぜて発酵させた「なれ寿司」です。小鉢に盛られて上品に出てきたのを見て、押し寿司を期待していたN隊長は猛然とクレームするも、店員さんに「んだども、こえが、ハタハタ寿司っす」と一蹴されていました。
雪道を暫く歩いて、秋田市民市場で地元の人々の生活を垣間見た後は、一目散に千秋美術館へ。駅の階段で案内板(写真)を見つけた「赤塚不二夫展」を観る為です。同展覧会は、2008年8月72歳で逝去した赤塚不二夫を追悼して、翌年から全国を巡回して開催されています。東京での開催期間中観ることが出来なかったのが、この秋田で偶然観る機会に恵まれたわけです。赤塚不二夫はナンセンスギャグ漫画の開拓者と称されています。異常に大きなコマ割りで、ストーリーに何の展開も無いまま終わらせたり、声が出なくなったという設定で、全く吹き出しの無い漫画を描いたり。それは読者への一種の挑戦であり、当時中学生だった私は、ナンセンスの何たるかも判らないまま「ナンセンス」という流行り言葉を連発したり、不条理の深淵を覗き見た気になっていたものでした。数多の魅力的なキャラクターの中でもニャロメとケムンパスは別格で好きでした。どちらかというといじめられっ子だった私にとって、まさに不条理にイジメられながらも全く意に介さず自然体のまま生き続ける2つのキャラクターに憧れと否定が入り混じった複雑な想いを抱いたものでした。今にして思うと、あの頃は色んなものから様々なことを学んでいました。その意味で人生の参考書ともなった赤塚不二夫作品ですが、改めて眺めてみると、ナンセンスとは程遠い含蓄の深さを感じました。そして、展覧会の最後は、著名人・漫画家による150枚にのぼる写真・イラストの「シェーッ!」が見送ってくれます。
「乗継ぎまでの3時間」といえば、以前ブログで紹介したフィッツジェラルドの短編ですが、小説でのとても切ない3時間とは異なり、とても幸せな3時間でした。次回は、いよいよ不老ふ死温泉です。

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