2012年8月1日水曜日

カーディフの苦悩 - なでしこ南ア戦

カーディフはロンドンから電車で約2時間、ウエールズの首都、人口30万人の地方都市です。街の中央にカーディフ城がそびえ、石造りの古い街並みが、さながら日本の城下町の落ち着いた佇まいを思い起こさせます。なでしこの試合会場は、駅から徒歩10分足らずのミレニアムスタジアム。収容人員74,500人。開閉式屋根の全天候型。ラグビーとサッカーの代表戦に使用されますが、メインはラグビーで、ラグビーの聖地として、サッカーの聖地ウェンブリーと並び称されています。素晴らしいスタジアムで、今やカーディフ城に代わる街のシンボルとなっています。
さて、なでしこ。極めて不甲斐ないゲームになってしまいました。チャンスをもらいながら、何も出来なかった丸山、岩渕、矢野などの控え組は、それ以上に悔しい思いをしていると思います。試合後の岩渕の悔しさを隠すかのようなほとんどふてくされている態度が象徴的でした。決勝までの6試合の中でこんな試合が出てきてしまうのは、やむを得ませんが、問題は、試合後の会見時の佐々木監督の発言です。インタビューの中で、佐々木監督は「ドローを狙える展開であれば、そういうことでいいと伝えた」とコメントしています。また、川澄投入時に「申し訳ないけどカットインの素晴らしいシュートはやめてくれ」と言ったと認めています。メダル獲得を考えると、2位通過は、対戦相手として米国、フランスを避けることに加え、移動せずに準々決勝に臨めるという大きなアドバンテージがあります。佐々木監督のみならずとも、2位通過狙いそのものは、指揮官として当然な選択肢です。ただ、問題はそれを公の場で口にしてしまったことです。「勝たない」という戦い方はFIFAのフェアプレーの精神に明らかに反しており、FIFAが問題視して何らかのペナルティが課される可能性があります。それ以上に、純粋にサッカーに全てを捧げているなでしこ達を、非難に晒すことになってしまいます。
佐々木監督のオープンで正直な性格には好感が持てますが、余りに不用意な発言でした。なでしこ達は、一旦は失望させてしまったカーディフの観客を、ブラジル戦、世界王者のパスサッカーで魅了することでしか、非難に答える術はありません。

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