2010年2月20日土曜日

バンクーバー五輪 - 男子フィギュア

フェデリコ・フェリーニ監督の「道」は好きな映画です。アンソニー・クイン演じる怪力の大道芸人とジュリエッタ・マシーナ演じる知恵遅れの道化の少女があやなすとてももの悲しい物語です。その「道」を、テーマ音楽にのせて高橋大輔選手が見事に演じきってくれました。その表現力の素晴らしさは、スポーツというより芸術に近いものだったと思います。今季、本番では1度も成功していない4回転に挑戦した心意気がまず称賛されるべきでしょうが、それ以上に評価されるべきは、その4回転の転倒にも動揺することなく、その後完璧な演技を行ったということです。その精神力の強さには感動すら覚えました。
一方、織田信成選手。演技中舞い降りてきたのは織田信長ではなく、チャップリンだったようです。ブカブカの靴に、ほどけた靴ひもといえば、チャップリンのトレードマーク。織田選手にとっては、悔やんでも悔やみきれない、余りにも残念な符合だったのかもしれませんが、彼の演技も、チャップリンの魂を呼び込む程、真に迫っていたということでしょう。演技を止めた瞬間に、チャップリンばりに肩をすくめて苦笑いし、会場の笑いを誘うというのは、20歳そこそこの若者に期待するのは無理な相談でしょうが、織田選手には、この過酷な試練を今度は笑顔で乗り越えて欲しいと思います。「道」の劇中にこんな言葉が出てきます。「道端の小石もきっと何かの役に立つ。世の中に無用なものなどないのさ」

0 件のコメント: