今回訪問した工場は、製造機械も自前で開発しながら、オートメーション化を進めていました。クリーンルームの中で、機械が複雑な動きを規則正しく繰り返しながら最終製品を組み上げていくのを見るのは非常に楽しいものです。同じ工程の繰り返しなのに、まるでルービックキューブが解かれていくのを見ているような驚きに満ちた楽しさがあり、いつまで見ていても飽きることがありません。機械には担当者が一人ずつついて、動きを監視しています。広い区画に従業員は数えるほどしかいません。
しかしながら、すぐ隣の一画ではケミカル臭の漂う中、中年の女性たちが等間隔に並んで筆で糊付けしたり、パーツをつなげ合わせたりという作業を繰り返していました。売れ筋で大量に出る製品は機械に投資してオートメーション化を進めているのですが、少量しか出ない製品は機械化の投資が引き合わず、いまだに手作業に頼っているということです。女性たちは見慣れない日本人が気になりながらも、黙々と自らの割当てをこなしていきます。決して、同情するつもりはないし、同情すること自体おこがましい行為であり、機械の監視役と流れ作業の担当者とどちらが楽しいのか判断のしようもありませんが、拓郎の「人間なんて」の曲が突然浮かんできました。女性たちの横で、この一画の責任者であるいかにも叩き上げといった風情の小太りのオジさんが目くばせしながら得意げにこう言ってくれました。「This is not Production(製造) but Art(工芸).」私は少し微笑んで答えました。「Sure!(そうですね)」オジさん、満足げにニッコリ。
なるほど・・・・。拓郎の曲は、「永遠の嘘をついてくれ」に変わりました。人生は、誤解をおそれずに言うならば、自らをある意味で騙し続けていくことがとても大切なことだと思います。
写真は、手前の建物が聖アンナ教会。市内唯一のレンガ造りのゴシック様式の教会です。その美しさはナポレオンがフランスに持ち帰りたいと言った程です。実は奥の教会が、高名な建築家の設計によるもので、手前の聖アンナ教会は、その年若い弟子が設計したものです。高名な建築家は、出来上がった教会を見て、その弟子の才能に嫉妬し、教会の塔から弟子を突き落として殺してしまったということです。「♪君よ 永遠の嘘をついてくれ いつまでも たねあかしをしないでくれ・・・」
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