2012年10月17日水曜日

ブラジル戦 ‐ 世界との距離

2006年ドイツW杯グループステージ最終戦、ブラジルとの対戦は、玉田の一撃で先制しながら、結果は1‐4。試合終了後、顔をおおってピッチに横たわったままの中田の姿が記憶に焼き付いています。まさしく、「惨敗」の二文字が相応しいゲームでした。6年の時を経て、今回のブラジル戦は同じ4ゴールを奪われ、更に完封負け。スコア的には前回を下回る結果でした。しかし、日本代表の選手達の表情に6年前のようにブラジルに蹂躙された無力感はありませんでした。むしろ、自らの実力を出し尽くした爽快感すら感じました。シュート数はブラジル15に対して日本9と、決して少なくありませんでした。逆にコーナーキック数は、ブラジル2に対して日本10と圧倒しており、少なくともゴール近くまで度々攻め込んでいたことを如実に表しています。ボールポゼションはほぼ互角だったと思いますし、ブラジル陣内であれだけパスを回せるチームはめったにいないと思います。6年前に比べて日本代表の大きな成長を感じました。親善試合だからこそ出来たことではありますが、強豪ブラジルとがっぷり四つに組んでわたり合おうとした日本代表は、少なくともメンタル面では、サッカー強豪国の仲間入りを果たそうとしています。
ただ、課題も見えてきました。ブンデスリーガで絶好調の清武と乾ですが、まだまだ世界レベルではないことは認めざるを得ません。アジアというモノサシではなく、世界というモノサシで測ることができたことが、今回の欧州遠征の大きな意義になりました。ハーフナー、清武、乾は残念ながら及第点に届かず。その意味で、佐藤寿人を試さなかったのが如何にも残念でなりません。課題として痛感したのは「ゴールに向かう姿勢」の差。ブラジルの先制点が象徴的でした。日本代表が細かいパス回しでブラジルDF陣を崩そうと四苦八苦していたところを、ブラジルは、日本DF陣を崩す手間など面倒とばかりにパウリーニョが25m近いトゥーキックでのミドルシュート。日本代表のレパートリーには入っていない攻撃パターンでした。日本代表の課題として、よく「決定力」という言葉が使われますが、そこに行きつく前の「崩し」に神経を集中する余り、肝心のシュートという「決定」的瞬間に集中力が散漫になってしまっている感があります。ゴール前のパスがひと手間多いという悪癖もこの「崩し」への過度のこだわりが原因だと思います。この「結果よりも過程」は日本人の特質ではありますが、この呪縛から抜け出すことが「決定力」を上げる重大な要因ではないかと思います。もうひとつ目立ったのが、同じパス回しでも、ブラジルのパスが7m前後での距離感なのに対して日本の場合には5m以内だという点。パススピード、精度という技術的な差によるものでしょうが、「守備はコンパクトに、攻撃はワイドに」がサッカーの基本。如何に攻撃の際のパス交換距離を広げ、相手守備陣の穴を広げていくかも、今後の課題でしょう。こうやって、課題を挙げていくと、本田(写真)は試合後「点差程のチーム力の差は無い」と語っていましたが、現段階では、結果的に妥当な点差だったのではないかと思っています。課題が見え、そして、日本代表は確実に成長を遂げていることが確認できました。ブラジル戦はザックの思惑通り、意義深い対戦となりました。世界はまだ遠いが、背中が見える距離にあります。


1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

あと、「緩急」と思います。ブラジルの、「スロー、スロー、クイック」、「クイック、スロー、クイック、クイック」のテンポに比べると、日本はいつも同じスピードだったように思います。選手一人ひとりの緩急もありますが、チームとしての緩急の取り方も、日本がもう一皮むけるための課題と痛感しました。