2012年10月14日日曜日

And Your Bird Can Sing

The Beatlesの中期の曲に「And Your Bird Can Sing」という楽曲があります。1966年にリリースされたアルバム「Revolver」に収録されている曲です。ツインリードギターでのリフレインの演奏が秀逸で、お洒落なメロディラインの名曲だと個人的には思っていますが、評価が分かれ、一般的にはそれ程人気のある曲ではありません。作者のジョンも、後に「つまらない曲で、ゴミ箱行きの曲だよ」と斬り捨てています。歌詞は、
♪ あなたは欲しいものはすべて手に入れたというけど
  私を手に入れてはいない  
  あなたは世界の七不思議を見尽くしたというけど
  私を見ることは出来ない
  あなたの宝物が重荷になってきたら
     私の方を向いて
  私はいつもあなたのそばにいるから
といった具合の一見安っぽいラブソングです。ただ、気になるのは、曲のタイトルにもなっている「And Your Bird Can Sing」のフレーズ。ヒントになるのが第2フレーズの「And your bird is green」。普通に訳せば「あなたの小鳥は緑色だね」なんですが、これでは意味をなしません。Greenには「世間知らず」とか「青ざめている」という意味もあります。「あなたの小鳥は世間知らずなんだよね」とか「あなたの小鳥は青ざめているよ」という風に訳して、「そして、あなたの小鳥は歌うことが出来る」の訳と重ねると、この「小鳥」とは、実はThe Beatlesなんじゃないかと解釈されます。だとすると、この「You」は小鳥の飼い主であるブライアン・エプスタインということになります。
当時、The Beatlesは、アイドルから世界的なミュージシャンへの過渡期にありました。前年リリースしたアルバム「Rubber Soul」に続いて、{Revolver」という音楽性の高い実験的なアルバムを発表し、独自の音楽世界を築きつつありました。もはや、その生み出す楽曲は、当時のステージでの再現は不可能であり、実際、ライブを中止し、スタジオでの音楽作りに専念するようになっていました。この曲「And Your Bird Can Sing」は、彼らのそんな思惑を無視して、世界ツアーを企画し、彼らを数々のステージに引き回してきたマネージャーのブライアン・エプスタインを揶揄した曲だったのではないでしょうか。歌詞は続きます。
♪ 小鳥が傷ついたら あなたは悲しむのかな
     むしろ目が覚めるかもしれないね
これは、ジョンのエプスタインに対する精一杯の皮肉だったのかもしれません。
そのエプスタインは、翌年の1967年8月にアスピリンの過剰摂取で突然の死を迎えます。検死の結果、事故として処理されましたが、同年9月末にはThe Beatlesとのマネジメント契約が期限切れとなることもあり、自殺ではないかとの説も根強くささやかれています。
改めて聴いてみても、この曲のメロディはやはり素晴らしいと思います。その曲に、つまらない詞をつけてしまったという悔恨の思いが冒頭のジョンの「ゴミ箱行き」発言に繋がっているのかもしれません。
ところで、ちょっと前のブログで内田篤人と拓郎の「外は白い雪の夜」の話題を取り上げましたが、朝日新聞の内田のインタビュー記事に「休日は家にこもって音楽を聴いている。対象は安室奈美恵から吉田拓郎まで幅広い」と紹介されていました。

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