2012年10月23日火曜日

帰ってきたウルトラマン ‐ 拓郎復活

(注)本ブログの内容には、コンサートでの演奏曲及びMCの内容等ネタばれの情報が含まれています。これからコンサートに行かれる方は、この点、ご承知の上、お読みください。・・・拓郎が3年振りにステージに戻ってきました。3年前、コンサートツアーを途中で中止し、以来ライブから遠ざかっていた拓郎の満を持しての復活ライブです。その間に2枚のニューアルバム(除くライブアルバム)をリリースし、坂崎幸之助とのオールナイトニッポンGoldでの掛合いは絶好調。「完全復活」が問われる今回のコンサートツアー初日、東京国際フォーラムAホールでした。
アラカン世代にとって、ウルトラマンと並ぶ絶対的なヒーローである拓郎も66歳。心身ともに体調が懸念される中、本人のみならず、観客にとってもどこか落ち着かない開演の瞬間でした。緊張のオープニング曲は、何と「♪ドゥ~ビ ドゥビ ドゥビ エマニエ~ル」映画エマニエル夫人のテーマ曲でした。先日逝去したシルビア・クリステルへの追悼曲。これで会場の緊張を緩めた後、実質的なオープニング曲「ローリングストリートキャフェ」。そして、その後に掟破りの逆サソリ、何と「落陽」。会場、戸惑いながらも総立ち。普通であれば終盤近くまで温存しておくべきこの歌を出だしにもってきて、いきなりトップギアにシフトしたのを、拓郎はこんな風に語っていました。「エンディング曲を歌ってしまいましたので、後のステージはオマケみたいなものです。皆さん、ご自由にご歓談下さい。僕は、勝手にステージで歌っていますので・・・」拓郎らしいジョークですが、多少なりとも本心だったと思います。3年振りのステージ、しかも、前回は途中で体調を崩しての中止。声は本当に出るんだろうか?会場の雰囲気に馴染んで、のっていけるのだろうか?不安だらけの手探りのステージだったと思います。だからこそ、のっけから伝家の宝刀「落陽」で自らと会場のテンションをピークに持っていったのではないでしょうか。(ちなみに、拓郎は、ラジオの中で、「『落陽』は出だしを歌えば、後はファンが勝手に後を歌ってくれるからこれほど楽な曲はない」と語っていました。)コンサートの中盤で「いい曲なのに、どうしても気持ちがこもらない曲がある。気持ちが乗らないから、演奏もドタバタになる。聴いてみたい?時間つぶしで」と、歌い出したのが「ふゆがきた」。加藤紀子への提供曲です。かなりの拓郎マニアでなければ、知らないと思います。案の定、会場は、ちょっと白けた雰囲気に。これは拓郎もこたえたんじゃないかな。その後は更にペットボトルを口にする回数が増えました。しかし、拓郎はやっぱり拓郎。ギターを両手で鷲づかみにし、仁王立ちで声を絞り出すようにして歌ってくれた「流星」「外は白い冬の夜」には魂が揺さぶられました。66歳が歌う「リンゴ」に青春の甘酸っぱい香りを感じました。昔は、むしろ抑えて歌うことで逆に感情のほとばしりを増幅させて伝えていた拓郎が、今は、絞り出すような歌声そのものに自然に全てが込められているような純化・昇華を感じました。また、最初にグッと盛り上げておいて、最後はしっとりと余韻を残して終わるという構成は、平均年齢60歳前後の観客層には十分アリだったと思います。青春時代の恋人に30年振りに出会ってお話ししたような何かぎこちない雰囲気でしたが、ヒーローがヒーローだったことを再認識し、素晴らしい齢の重ね方をしていることを確認することが出来たコンサートでした。5,000分の1の拍手ではありましたが、僅かでも拓郎にエールが届いたかなと・・・。貴重なチケットを割いて、コンサートに誘って頂いたDr. Steveには大感謝。ラストの「外は白い雪の夜」は、内田篤人とY子さんに聴かせたあげたかった・・・。

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