2012年10月13日土曜日

フランス戦 ‐ 「青」の誤算

デシャンフランス代表監督は、試合後の会見で「格上の相手に負けたのなら落ち着いていられるが、今日はそうではない」と文字通り落着きを失ったコメントをしています。W杯欧州予選の大一番スペイン戦に向けて弾みをつける一戦にするつもりが、よもやの敗戦。フランス代表(Les Bleus‐青‐)にとっては、大きな誤算でしたが、ゲームの中でもいくつかの誤算が重なりました。まず、仮想スペインとして、日本のパスサッカーを予想していたのが、前半は完全に日本が委縮して、パスサッカーどころではなかったこと。その前半に14本のシュートを放ちながら、得点できなかったことが第二の誤算。フランスが圧倒的にゲームを支配していた前半のうちに先制点が入っていたら、ゲームは全く異なった展開となり、11年前のサンドニの悲劇(0‐5の惨敗)が再現された可能性もあったと思います。第三の誤算は、高さを活かせなかったこと。スペイン戦を考えても、高さはフランスの強力な武器になるはずです。ところが、コーナーキックという高さを活かす絶好のチャンスが15回もありながら、ゴールを割れず。これはかなりショックだったと思います。コンディションが良くなく、温存を予定していたリべリを投入せざるをえない展開になったのも誤算のひとつ。ただ、リべリが入って、中央突破から日本のDF陣が崩されるシーンが増えただけに、もう少し早く投入していたら、結果が違っていたかもしれません。また、吉田のペナルティエリア内でのジルーへのチャージをPKを取ってもらえなかったのも、ホームゲームでの誤算といえば、誤算でしょう(ただ、審判がスコットランド人ですから、英仏の関係を考えるとホームタウンデシジョンは期待出来なかったでしょうが)。もうひとつのブルー、Samurai Blueも誤算だらけでしたが、その誤算を何とかしのいだのが勝因でした。誤算の第一は、やはりフランスの名前に怯えてしまったこと。いつものように前線からの積極的守備が出来ませんでした。ただ、サイドに追込む守備を最後まで徹底し、フランスの攻めをサイドからのクロスという単調な攻めに限定させ、ゴールを守り抜きました。第二の誤算は、アジアで猛威を奮ったハーフナー・マイクの高さが、世界には通用しなかったこと。前線へのくさびのパスが全く収まらない状況では、厚みのある攻撃は困難です。ワントップは前田の一枚看板でいかざるを得ないのか、本田をFW起用するのか、あるいは、岡崎や佐藤寿人のような裏に抜けるタイプのFWに託すのか、ザッケローニは決断を迫られそうです。そして、最大の誤算は、自分達らしくないサッカーで勝ってしまったことでしょう。大方の予想は、日本らしいサッカーを展開しての惜敗。その逆になってしまったことをどう受け止めるかが、日本サッカー界につきつけられた難問といえるでしょう。私自身、アウェイでフランスに勝ったという歴史的勝利を目の当たりにしながら、日本代表のゲーム運びに満足できず、素直に喜べない自分に戸惑っています。
デシャン監督は、コメントの中で更にこう語っています。「我々が試合を優位に進めていたが、点を決められず、最後に罰を受けた。」プラン通りにならないのがサッカー。ただ、その誤算にどこかで折り合いをつけていかないと、最後に惨酷な結末が用意されているのもサッカーです。
ところで、日本のあの得点は見事でした。今野の60m近いドリブルでの攻め上がり。並行して左サイドをフリーで駆け上がる乾。右サイドから中央に切れ込む香川。その空いたスペースに駆け上がる長友。首を振って周りを確認していた今野ですが、長友までは見えていなかったそうです。ただ、香川の動きで察知し、左サイドでフリーになっていた乾にではなく、右サイドのそこにいるべき長友へのスルーパスを選択しました。長友のダイレクトクロスを香川が倒れ込みながらシュート。すべてがジクソーパズルのピースのようにピタッとはまって生まれた美しいゴールでした。

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