2012年3月21日水曜日

I am the Walrus - サイケデリック・ロックの金字塔

The Beatlesの"I am the Walrus" はTV映画Magical Mystery Tourの挿入曲です。写真のように4人がセイウチなどの着ぐるみをまとって、野外で歌っています。Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Bandなど中期のBeatlesのアルバムにはサイケデリック・ロックとよばれる曲が多数含まれていますが、その中でもこの曲は特にサイケデリック色の強いナンバーです。ちなみに、サイケデリックとは、「LSDなどの覚醒剤によってもたらされる様々な幻覚、極彩色のぐるぐる渦巻くイメージやペーズリー模様によって特徴づけられる視覚・聴覚の感覚」の形容表現とのことです。その独特の浮遊感と超現実的な音作りを基調としたのがサイケデリック・ロックです。このI am the walrusは、メロディーもさることながら、歌詞も強烈です。冒頭の「♫I am he as you are he as you are me and we are all together. 」から既に幻覚症状。歌詞に出てくる"Eggman"はルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』に出てくるハンプティ・ダンプティを連想させるので、タイトルのWalrus(セイウチ)も同作品に出てくる「セイウチと大工」からとられたものだとされています。また、「Goo Goo g' Joob」は「Good Job」とセイウチの鳴き声をかけたものと言われています。この辺りまでは、まだ、幻覚的とはいえ、作為性のある歌詞ではあります。2番の出だしの「Sitting on a cornflake, waiting for the van to come. 」は、面白い情景ですし、、3番の歌詞にある「Lucy in the Sky」はまさにご愛敬。まだ、正常な思考回路が残っている感があります。しかし、4番は、一転して書くもおぞましいグロテスクな歌詞となり、まさに幻覚・幻聴の世界。その意味ではサイケデリック・ロックの金字塔をなす作品かもしれません。ポールも、自伝『Many Years From Now』の中で、この曲をジョンの最高傑作の一つと称賛しています。5番は、「英国風の庭で太陽が昇ってくるのをまっている。太陽が昇ってこなければ、英国の雨に打たれて日焼けをすればいい。」ととても幻想的で情緒的な歌詞。個人的にはとても好きな情景描写です。エンディング付近は、イワシがエッフェル塔をよじ登ったり、ペンギンがヒンズー教の聖歌を歌ったり、エドガー・アラン・ポーが蹴飛ばされたりと、ナンセンス・フラッシュのオンパレード。確かにしらふでは書けない歌詞ではあります。
それにしても、終盤にグッとせり上がってくるような、押し寄せてくるようなリフレインは、この曲の真骨頂です。実は、この曲のレコーディングの数日前の1967年8月27日に、デビュー以来のマネージャーであったブライアン・エプスタインが死亡しています。この曲の圧倒的な迫力は、エプスタインに捧げる惜別の叫び故かもしれません。「♫ goo goo g'joob g'goo goo g'joob」

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