2012年3月8日木曜日

アルガルベ杯決勝 ‐ 川澄ストーリー

アルガルべ杯決勝。準決勝米国戦は玄人好みの名勝負でしたが、決勝戦は、サッカーの面白さを満載した素晴らしいゲームでした。前半は、連戦の疲れからか、なでしこの動きが鈍く、間延びした布陣の間を突かれて、ドイツに押されっぱなし。大きく蹴り返しては、拾われ、波状攻撃を受けるという最も悪い流れで、2失点はやむを得ない展開でした。その流れを変えたのが、前半35分の川澄の冷静なゴール。この1点でなでしこは完全に落着きを取り戻しました。後半はなでしこペース。守備の底からショートパスでしっかりとビルドアップして攻め上がってくるなでしこに、今度はドイツが蹴り返すだけの展開になってしまいました。こうなれば、同点・逆転は時間の問題と思って観ていましたが、さすがに相手は追い詰められれば追い詰められる程底力を発揮するゲルマン魂のドイツでした。最後はミラクルゴールで突き放され、優勝には手が届かなかったものの、なでしこの進化を実感させてくれた大会でした。さて、反撃の狼煙をあげた川澄ちゃん。157cm、??kg。ドイツのDF陣とは20cm近い身長差。その体格差をもろともせずに、ドイツの重厚な守備陣をスピードとテクニックで切り裂きます。そのプレースタイルは、爽やかな笑顔とともに、とても好感が持てます。この試合右サイドバックで先発したDF有吉は日体大の2つ下の後輩。大学4年時、川澄は右膝前十字靱帯断裂の苦難を克服していますが、その2年後、有吉もまた左足前十字靱帯を断裂しました。その時、有吉のもとには1つの大きな段ボールが送られてきました。中には川澄自身が使っていたサポーターなどリハビリ用品と1冊の詩集。川澄がリハビリ中に読み、共感した詩を手書きでつづったものでした。有吉は「自分にも他人にも厳しい先輩だったけど、ナホさんがいたから私もがんばれた。今日は同じピッチに立ててうれしかった」と語っています。また、2点目を決めた田中選手とルームシェアしながら、慎ましい生活を送っていることは、有名です。昨年末表紙を飾ったanan(写真)で、W杯優勝で一変した現在の環境に先ずは感謝し、感謝の気持ちがパワーの源泉になっていると語っています。そして、インタビューの最後は「10円安い野菜を見つけてもすごく幸せになれるんで、『安い女だな』とも思うけど、それだけ幸せの数が多いから、本当に幸せな人間だと思います」という言葉で結ばれています。昨年のアルガルベ杯で代表初ゴールを含む2ゴールをあげ、代表定着を果たしたシンデレラガールが、今大会では、代表のエースとして活躍していました。小学校時代に沢の膝の上に乗せてもらって写真を撮って以来、沢に憧れてサッカーに打ち込んできた少女が、感謝パワーで沢不在の穴をしっかりと埋め、明日のなでしこの姿を示してくれました。

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