2012年3月6日火曜日

なでしこ米国戦 ‐ 平成名勝負数え唄

アルガルベ杯は、ポルトガル南部アルガルべ地方で毎年開催される女子サッカーの国際大会です。FIFAの管轄外大会ですが、女子サッカーでは五輪・W杯に次ぐ権威ある大会とされています。日本は昨年初参加し、グループリーグで米国に敗れ、決勝進出を果たせませんでした(3位決定戦でスウェーデンを破り、3位)。今年も決勝進出を賭け、同じく米国との因縁対決。W杯決勝で米国を破ったとはいえ、PK戦での勝利ですので、公式記録上は引分け。これまでの対戦結果は日本の0勝4分21敗ということになります。記録的には圧倒的に不利な相手に、体調不良の沢を欠く陣容。当然、前半は押し込まれ、守備に追われる展開を予想していましたが、なでしこは期待を大きく上回る成長を遂げていました。DFからしっかりとワンタッチのショートパスを繋いでビルドアップし、圧倒的にボールを保持ながら、ゲームをコントロールします。これに対して米国はロングフィードの大きな展開からパワーとスピードで日本の守備陣を切り裂き、日本ゴールを脅かします。お互いの持ち味を十分出し合った手に汗を握る好ゲーム。前半45分はあっという間に過ぎ去りました。後半も一進一退のゲーム展開に佐々木監督が動きます。後半20分に3人同時の選手交替。その大胆采配に一瞬唖然としましたが、FIFA公式試合ではないので、6人まで交替可と聞いて、納得。更にボランチ阪口に変えてFW菅沢投入。高瀬をFWからボランチに下ろすポジションチェンジ。1点リードのロスタイム終了間際には選手交替でしっかりと時間を稼ぐ冷静さ。米国相手の大勝負ながら、しっかりと選手を試し、フォーメーションを試す心憎い采配に、佐々木監督の更なる進化を感じました。相手にボールを回され、ボールを追いかける展開は、ボディブローの様に米国の選手から体力を奪います。後半途中から米国は完全に足が止まってきました。2列目以降の押上げが出来ず、折角サイドを崩しても中央に厚みを欠き、シュートに結びつきません。そして、高瀬のゴール。圧倒的に高さに勝る米国相手に、バックステップでマークを外すという技ありで空中戦を制してのヘディングシュート。見事でした。GKソロの反応も鈍く、GKまで足に来ていたようでした。
かつてのプロレス黄金期に「俺は藤波の噛ませ犬じゃない」との発言に端を発した藤波辰巳対長州力の一連の因縁対決があり、古舘伊知郎により「平成の名勝負数え唄」と命名されていました。剛対柔、パワー対テクニック。ロングフィード対ショートパス。コントラストに溢れ、サッカーの魅力満喫の米国対なでしこの対戦は、W杯ドイツ大会以降まさに「名勝負数え唄」に相応しいゲーム内容です。米国も雪辱を期して、ロンドンに乗り込んでくるはずです。五輪女子サッカー決勝で、両チームがどんな数え唄を奏でてくれるのか、期待せずにはいられません。

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