2011年3月20日日曜日

千石にて - 絆(きずな)

17日木曜日、大停電回避のために政府から節電の呼びかけがなされました。首都圏の各交通機関は、ラッシュアワーの間引き運転を実施し、その影響で新宿・渋谷・池袋などの主要駅には長い行列が出来ていたようです。私は、帰宅ラッシュの混乱をやり過ごす為に、高校時代の友人と一緒に千石の居酒屋でTVでニュースを見ながら、杯を傾けておりました。
彼は、阪神淡路大震災を経験しており、被災の悲惨さ、苦しみを身をもって知っていました。東北方面への電車が復旧すれば、乗り継いででも、救援物資を現地に届けたいと語っておりました。我々の会話を聞いていた店の女将さんが、こんな話をしてくれました。朝方、京都ナンバーのヴァンが店の前に止まって、20代の若者数人が、自動販売機で缶コーヒーを買っていたそうです。「どこまで行くの」と声を掛けると、被災地まで救援物資を届ける途中だということです。震災の後、救援物資運搬のボランティアに応募し、大渋滞の中、一日がかりで漸く東京まで辿りついたとのことです。「俺は運転する位しか出来ないから」と運転していた若者は疲れた様子も見せず、明るく笑っていました。「何か暖かいものでも作ってあげるよ」と誘うと、「急ぐから」と車を出そうとするので、近くにあったおせんべいの箱を渡して、「これでも食べながら、気をつけて運転していってね」と見送ったそうです。若者は、「俺たちはちゃんとモノを食べてるから、このおせんべいは被災した人たちに渡すね。必ず渡すからね」という言葉を残して、立ち去っていったそうです。女将さんは、涙を浮かべながら語ってくれました。寡黙なご主人が、冷や奴を盛りつけながら、ポツリとつぶやきました。「日本もまだまだ捨てたもんじゃねぇ」
灯りを絞った店内で、小さな石油ストーブで暖を取りながら、ご主人も交えて話をしていると、ご主人は以前大手電機メーカーのシステム機器の営業を行っており、その関係で、共通の知合いがいることが判りました。世界はどこかで繋がっています。そして、その人と人との絆で世界は出来あがっています。その絆を強め、支え合う時です。

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