2010年9月15日水曜日

薔薇の塔 - 明治の画家達の夢見たもの

以前のブログで薔薇の剪定につき書きましたが、同じ公園で、今度は薔薇の塔(写真)が出現しました。近隣の花屋が製作した生花の薔薇によるモニュメントです。夏枯れでかなり色褪せていた公園に、文字通り華やかな輝きを発しています。ピンク系の花の塔を色とりどりの薔薇の花が囲み、良くできたモニュメントではありますが、剪定された薔薇の茎の切り口との取合せは、何か居心地の悪さを感じずにはいられません。また、自然の美と人工の美の対比をつきつけている感もあります。
この公園は、丸の内の三菱一号館美術館の中庭です。煉瓦造りの三菱一号館は、明治時代に建造された丸の内の最初の西洋建築によるオフィスビルを復元したものです。現在の公園は、当時はオフィスビルのパティオだったわけで、背広に山高帽姿の明治のビジネスマンたちが憩っていたのでしょう。
現在、三菱一号館美術館では、「三菱が夢見た美術館」と題して、岩崎家と三菱グループのコレクションの展覧会が開催されています。明治中期から昭和初期の日本の代表的洋画家の作品やモネやルノワールなどの印象派の絵画を観賞することが出来ます。日本の近代画家達の作品からは、強烈な西洋絵画への憧憬の香りが漂っています。モネの作品と見紛うばかりの黒田清輝の「春の名残」。藤島武二の「日の出(海)」は明らかにモネの「日の出・印象」に挑んだ作品でしょう。ルノアールの「パリスの審判」とそれを直接模写した梅原龍三郎の作品を並べて展示しているのは、本展覧会最大の見所だといえます。日本の近代洋画家たちも、ひたすら「坂の上の雲」を望みながら、近代化の道を疾走していたのでしょう。一方で、欧州の画壇では、日本の浮世絵などに心酔するジャポニスムが印象派に大きな影響を与えていたわけです。歴史の皮肉といえるかもしれません。
薔薇の塔は、やがて朽ち果て、剪定された薔薇の木からは、やがて新たな蕾が芽吹いてくることになります。ようやく、秋風が吹いてきました。

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