2012年6月10日日曜日

ヨルダン戦 ‐ 強さの秘密と一抹の不安

W杯アジア最終予選、初戦快勝の後の大事な一戦。相手は相性の悪いヨルダン。固くなり、慎重になってもおかしくないゲームですが、サムライブルーは、あたかも親善試合のようにリラックスしてゲームを支配し、得点を重ねました。6対0は掛け値無しの快勝であり、現在の日本代表の強さを実証した試合でした。日本代表史上最強チームとの称号に相応しい戦いぶりでした。不思議なチームです。主力は、北京五輪3連敗と惨敗した反町ジャパンのメンバー。エース本田は、まだまだ中田英寿の域には達していないと思いますし、岡崎も尊敬するゴン中山を超えるには至っていません。守備陣は、ドイツW杯のメンバーの方が安定していました。中盤も、名波・稲本・小野・俊輔の黄金のカルテットの方がタレント的には上。そんなフツーの男の子達のチームの強さはどこからくるのでしょうか。圧倒的なボールポゼションとパス回しを可能にしているのは、このチームの誰もが口にする「団結力」です。そして、それを支えているのが、個々のメンバーの様々なリーダーシップではないかと分析しています。まずは、キャプテン長谷部の正統派キャプテンシー。彼の存在が、チームに規律と信頼感をもたらしています。そして、本田の力づくの牽引力。長谷部とは違った意味でのリーダーシップです。彼の存在が、チームに力と勇気を与えています。影のコンダクター、遠藤の存在がチームに落着きをもたらし、香川・長友の海外での実績がチームの自信となっています。岡崎のひたむきさ、ムードメーカー今野、槙野の存在もチームのアクセントとなっており、一種のリーダーシップを発揮していると言えます。これらのリーダーシップがうまく噛み合い、個々のメンバーの力を増幅し、チームの強さの源泉となっているのです。ただ、不安が無い訳ではありません。複数のリーダーの存在は、チームが上り調子の際には大きな推進力となりますが、一度歯車が狂い始めると、チームを分裂させる原因となりかねません。それは、ドイツW杯本戦で日本代表に起こったことでもあります。もっとも、このチームの場合、北京五輪での挫折体験、南アW杯での成功体験を共有しており、チームとしての団結力が簡単には崩壊しない強みがあります。一抹の不安はヨルダン戦の5点目のPK。FW前田が得たPKですので、本来であれば、本人の前田がPKを蹴るところです。ハットトリックが掛かる本田に前田が譲った形でしたが、本田は前田に気遣うこともなく、最初からボールを離しませんでした。しかも、PKのシュートはゴール中央へのフワッとしたシュート。キーパーが足でクリア出来るボールでした。もし、クリアされていたら、日本代表に小さな火種が生じていたかもしれません。
ヨルダン戦でのもうひとつの発見は、ザッケローニの手堅さ。大量リードの後半。サポーターが宮市の投入を待ち望んでいることは、ザックも判っていたはずです。にも拘わらず、2枚目のカードは憲剛、3枚目は伊野波でした。吉田の負傷退場で、DFのバックアップを試す狙いと、レギュラーCB今野の温存を図ったものでした。豪州との戦いを見据えた冷静な采配でした。ジーコだったら、間違いなく宮市、ハーフナー投入だったと思います。

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