
「♪さりげない日々につまずいた僕は 星を数える男になったよ ・・・流れていく」富と名声、可愛い奥さんと、すべてを手に入れ、更に活動の幅を広げた当時の拓郎は、第三者的には絶頂期というべきでしょうが、当の本人はどこか拭い去れない違和感を感じていたようです。
「♪心のどこか忘れもの ただそれだけでつまはじき 幸福だとは言わないが 不幸ぶるのはがらじゃない」四畳半フォークと一線を画し、フォークの枠に囚われない自由な活動を行うのが、拓郎のポリシーでしたが、その中で大事なものを置き忘れてきてしまった喪失感があったのでしょう。
「♪流れる星は今が綺麗で ただそれだけに悲しくて 流れる星はかすかに消える 思い出なんか残さないで」この「流星」に続いて「外は白い雪の夜」「唇をかみしめて」という珠玉の名曲を発表しているのですが、ヒットには繋がりませんでした。また、3年後にはフォーライフの社長を退任すると共に浅田美代子との結婚生活も破局を迎えています。拓郎は当時の自分自身に流星の運命を予感していたのかもしれません。
「♪君の欲しいものは何ですか」はこの曲のサビでリフレインされるフレーズですが、曲の最後は「♪僕の欲しかったものは何ですか」というフレーズのシャウトで終わります。拓郎のダミ声に心が揺さぶられます。でも、「風になりたい」もそうですが、女性がカバーすると、とても心に浸みる歌になるんですね。拓郎が33歳の時に投げかけた問いに、私は56歳を前にして答えようとしています。そして、今、思っています。「♪間に合うかもしれない 今なら」(「まにあうかもしれない」アルバム「元気です。」収録曲)