2010年5月5日水曜日

ぽたりと落ちる汗 - 吉田拓郎大展覧会

GW終わってしまいました。遠出をせずにテニス三昧の日々でしたが、その合間に渋谷のデパートの特設会場で開催されていた「吉田拓郎」大展覧会に行ってきました。拓郎の年譜を追いながら、当時の写真を眺めたり、ライブ映像を観たりして、拓郎の40年間をたどった充実の2時間でした。長髪、おかっぱ頭、カーリーヘアー、今の短髪に至るまで、拓郎の髪型の変遷にも、自らの時代が重なり、感慨深いものがありました。それにしても拓郎の人生は波乱万丈です。当時の音楽界の体制に反旗を翻してフォーライフを立上げ、その戦いを背負い込みながら、一方で、「結婚しようよ」や「旅の宿」が商業主義と批判されて、コンサートでビンや缶を投げつけられたりしました。5万人を集めた1975年のつま恋コンサートから31年を経て行われたつま恋での「同窓会」コンサートまでの間には失意の時期と闘病の時期がありました。それは、同世代の人間にとって、それぞれの人生の凝縮でもあり、増幅ともいえます。ただ決定的に違うのは、彼は、いつも、我々の前を走り続けていたということです。フォークジャンボリーでノーマイク、ノースピーカーで2時間にわたり「人間なんて」を熱唱したのが彼の疾走に向けての狼煙でした。ソロでのコンサートツアーで地方都市に東京と変わりない旬なミュージックシーンを届け始めたのは彼でした。伝説の「つま恋」がオールナイトの野外コンサートの先鞭をつけたことは言うまでもありません。それでいて、妙な高ぶりや悲愴感が無いのが拓郎の拓郎たる所以でしょう。会場で上映されていたつま恋ライブの映像で目に焼きついたシーンがありました。曲は「ああ青春」だったでしょうか。白いバンダナを巻いた長髪の毛先から汗の滴がぽたりと落ちていきました。飛び散る汗ではなく、滴が徐々に大きくなってぽたりと落ちる汗でした。僕らは、拓郎の楽曲に託した滴が大きくなる様に眼を凝らし、切り取られた一瞬の世界を映しながらぽたりと落ちる様に心を揺さぶられてきました。そして、僕らは、今、ここに立っていて、拓郎は、オールナイトニッポン・ゴールドに復活して、弾けています。いまだに、前を走り続けているのです。五月のまばゆい光の中、デパート前の渋谷のスクランブル交差点でどちらに向かっていけばいいのか戸惑っていると、シャッフルモードのデジタルオーディオから拓郎の歌声が流れてきました「♪街を出てみよう 今住んでるこの街が 美しくみどりにおおわれた 心のふるさとだったとしても・・・・」

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