2009年1月3日土曜日

サッカー王国、静岡


年末年始のサッカー観戦三昧の締めくくりは、等々力での藤枝東(静岡)vs境(鳥取)の高校サッカー2回戦(写真下)となりました。試合は4-0で藤枝東の快勝。境の監督の「ラインを上げろ~!下がるな!」という再三の叱咤も空しく、藤枝東の流れるようなパスワークの前に境のDFラインはズルズルと後退し、前線との距離は開くばかり。単発のロングパスに走りこむ境の超高校級ストライカー住田も、常に二人掛かりで挟み込む藤枝東の守備の前に決定機も作れぬまま、不発。サッカー王国静岡の復活を期待させる横綱相撲でした。しかし、その藤枝東も3回戦では熊本の大津高校に屈し、ベスト8進出ならず。スコアこそ3対2でしたが、大津高校のサイド攻撃と個人技に守備陣がズタズタに切り裂かれ、力負けの完敗でした。 (スピードについていけず、後ろからのチャージで2枚イエローをもらったのは、静岡勢としては屈辱だったはずです。)
昨年こそ決勝に進出したものの、静岡代表が高校サッカーで優勝したのは95年の鹿実との両校優勝が最後ですから、もう14年前ということになります。高校サッカーの都度使われる「サッカー王国静岡」のフレーズに違和感を覚える若手世代も少なくないと思います。「王国」はもう過去のものなのでしょうか?「全国で勝つより静岡を勝ち抜くことの方が難しい」という言葉は今や昔なのでしょうか?キック&ラッシュ全盛の高校サッカー界にドリブル突破という個人技サッカーを持込み、全国を驚かせた76年の静岡学園、長谷川・堀池・大榎の三羽ガラスがトータルフットボールで頂点を極めた82年の清水東など、静岡は常にそのスタイルで高校サッカーをリードしてきました。しかし、サッカー人気の浸透に伴い、全国の技術レベル・戦術レベルが向上してきた中で、王国静岡の優位性が薄れるとともに、フィジカル・走力よりも技術を優先してきた静岡のサッカーが、全国で勝ちにくくなってきたということなのでしょう。今年の藤枝東のコンパクトなパスサッカーも先進的なスタイルでしたが、守備面での個の力という点で弱点を有し、全国を勝ちきれるチームではありませんでした。高校サッカーを制する為にはやはり「負けない」チームであるという要素が必要です。野球で言えば、絶対的なエースを有し、守備がしっかりしたチームという当たり前の条件なのですが、サッカーでは、なかなかこのような見方はされません。特に静岡では、まず美しく華麗なサッカーが優先され、どうしても、泥臭い守備は後回しになってしまいます。王国であるが故の美学へのこだわりが、全国大会での勝ちから静岡代表を遠ざけているのかもしれません。でも、それでいいのではないかと思います。。高校サッカー選手権は、それが終着点ではなく、教育や成長の過程の中での通過点です。高校サッカーあるいはユースにおいては、試合での勝利よりも大事なものがあるのではないでしょうか(勿論、勝利への執着心を植えつけることは大事ですが)。その意味で、静岡サッカーは、このまま美しさを追い求めていって欲しいと思います。そうしている限り「サッカー王国静岡」であり続けるわけです。そして、それがひいては日本サッカーのレベルを押し上げ続けていくはずです。ちなみに、08年度J1登録選手のうち静岡出身者は東京都出身者をおさえて堂々の1位です。
静岡県の誇る富士山はその高さ以上にその美しさ故に人々の心をときめかせ、畏敬の念を惹き起こすのだと思います。(写真上は1月3日新富士駅のホームから撮影した富士山) 静岡サッカーよ、いつまでも美しくあれ。

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