2013年6月5日水曜日

余りに予定調和の結末 ‐ 豪州戦

いずれにせよ、W杯出場決定の歴史的ゲームになるだろうとの確信はありましたので、祝賀セレモニーが終わってからの遅い帰宅になることを覚悟していました。しかし、実際には、素直に喜ぶ気になれず、試合終了後早々とスタジアムを後にしました。浦和美園駅までの約20分間の道のりは、喜びに沸くサポーターは少なく、まるで山間の沢の流れのような静かな青い帯が小刻みに揺れているのみでした。評価しにくいゲームでした。前半見事なカウンターをし掛けていた豪州も、後半はピタッと脚が止まり、完全に日本ペース。それでもゴールを決め切れない日本は、DF栗原を投入し、スコアレスドロー狙いの3バック(?)へのシステム変更。ところが、攻撃的3-4-3が染み付いているチームはサイドが前掛かりになってしまい、豪州のラッキーな先取点の遠因を作ってしまいます。最後のPKは豪州戦アウェーでの不可解なPKの埋め合わせのようなサッカーの神様の采配。結果だけみると、日本がW杯への切符を手にし、豪州も勝ち点1の積上げにより望みを繋ぐという、双方にとって最低限の目標を達成した極めて予定調和的な結果となりました。5大会連続W杯出場というのは大変な偉業であり、素直に喜ぶべきでしょうが、代表選手達が「W杯優勝」を口にしている以上、サポーターとしても、安易な妥協は出来ません。アジア最終予選突破を通過点とするならば、最終ゴールの本戦での躍進は現時点ではかなり遠いと言わざるを得ません。このままでは世界と戦えません。ザックジャパン発足時は、守備が安定し、攻撃時の選手間の連携も躍動感が溢れていました。しかし、このところ、守備は厚みに欠け、攻撃も狭いスペースの突破にこだわり過ぎている感があり、「組織は出来上がった。次は個の成長」の呪縛に囚われ、肝心の連携を失いつつあるのではないかと危惧されます。成長の過程の踊り場状態といえるかもしれませんが、ここを乗り切り、確実な成長を実現できるのか、あるいは、このまま、組織崩壊の途を辿るのかは、まさに指揮官の手腕次第というべきでしょう。トルシエ、ジーコは失敗し、南アW杯時の岡田監督のみが結果を残しました。ザッケローニは、人柄的には極めて好感を持てるのですが、今回の豪州戦でのドタバタ采配をみると若干不安なしとはしません。スコアレスドロー狙いでDF栗原を投入したのは理に適っています。ただ、ここで、3バックにしたのか、長友を1列前に出して4バックを維持したのかの指示の不徹底がありました。また、終了間際にハーフナーを投入して豪州相手に空中戦を挑んだのは全く疑問。後半明らかに足の止まった豪州には、裏を取ってスピードで挑めるFWの投入が筋。ベンチに佐藤(広島)や石川(FC東京)がいたらと思いました。コンディションの整わない本田・岡崎を先発させたのも疑問。前半は守備重視で後半に勝負する展開でも良かったのでは。チームの建直しには、監督のマネジメントの他、ピッチ上の精神的支柱、流れを変えられる存在が必要です。個人的には遠藤にその役回りを担って欲しいのですが、どうも本田が自他ともに認めるピッチ上の指揮官になりそうです。確かに、はずせば大変なバッシングの標的になりかねない最後のPK(写真)を、ボールを抱えたまま誰にも譲る気配がなかった強靭な精神力は、リーダーの資質十分。ただ、イチかバチかのど真ん中シュートには危うさを感じます。キックスピードで勝負する為にどうしても力が入り、枠をはずすリスクも高まるわけですから。結果的に本田に救われたザッケローニとしては、「チームホンダ」の刷り込みが一層強くなったと思います。今後は、更に本田への依存が強まることでしょう。本田が本戦までの1年間で冷静さとしたたかさを如何に身に着けていくかに、ザックジャパンの命運がかかっているといっても過言ではないかもしれません。

0 件のコメント: