2012年7月30日月曜日

グラスゴーからの「軌跡」-スペイン撃破

U-23日本代表がスペインを破った翌日、マスコミ各紙には、「グラスゴーの奇跡」との活字が躍っていました。1936年ベルリン五輪で優勝候補スウェーデンを破った「ベルリンの奇跡」、1968年メキシコ五輪で地元メキシコを破り、銅メダルに輝いた「アステカの奇跡」、1996年アトランタ五輪でブラジルを破った「マイアミの奇跡」、再びという訳です。今回の勝利は、ブラジルの猛攻に耐えに耐え、相手の連係ミスによるワンチャンスでの得点で勝利したマイアミと異なり、落ち着いた試合運びでゲームを支配しており(ボールは支配されましたが)、アステカでの勝利に近いものでした。むしろ、勝つべくして勝った感が強く、「グラスゴーの奇跡」と呼ぶのは、関塚ジャパンのメンバーには失礼だと思います。彼等は、人が本当によく動くいいサッカーをしていました。勝利の最大の要因は、とにかく運動量で勝ったこと。本来は、退場で1人を欠いたスペインが運動量で上回って、数的不利をカバーしなければならないところ、日本はそれを更に上回る運動量で対抗しました。永井や清武が最後まで裏への飛出しを執拗に繰返し、前線でのチェーシングを続けたことにより、スペインは、中盤・DFのラインの押上げに迫力を欠き、FWとの間が間延びし、得意のコンパクトな陣形からのコレクティブな攻めが出来ませんでした。もちろん、2人が決定機をはずしまくっていなければ、大勝もありえたのですが、あれだけ走り回っていては、ゴール前での精度を欠いてしまったのも已むをえないと思います。
この勝利で、スペインと同じレベルになったと喜ぶのは早計でしょう。スペインは、決勝までの6試合を見据えた上で、この試合はあくまで6分の1の位置づけ。かたや日本は決勝トーナメント進出の鍵を握る正に「この一戦」との位置づけ。必死さが違います。運動量に違いが出てきて当然でしょう。
かつて、アルマダの戦いでスペイン無敵艦隊を撃破した英国がその後スペインに代わって海洋覇権国家となりました。このグラスゴーの勝利が、日本サッカーの歴史的分水嶺となり、男子サッカーの世界での躍進のスタート地点になってくれればと思います。その時、「グラスゴーの奇跡」は「グラスゴーからの軌跡」となる訳です。

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